引き続き、NHKテレビ「世界の音楽」の外国人出演者リストを書き出す。50代後半以上の人には、ミルバやエンリコ・マシアスなど、なじみのある名前がかなり登場してくる。1973年も放送時間は前年同様、日曜夜8時45分からの45分。その前の時間に放送している大河ドラマは、「国盗り物語」(平幹二朗)。
1973年
ジルベルト・ベコー/アントニオ・ガデスとスペイン舞踊団/ミルバ/ジャンニ・モラディ/ジリオラ・チンクエッティ/クリスティーナとウーゴ/ヤコフ・フリエール/ジョニー・アリディ/ペドロ・ラヴィルヘン/アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズ/フランチーニ・ポンティエル楽団/アルパノリス/ウド・ユルゲンス/エドムンド・ロス楽団/エンリコ・マシアス/ジャック・ルーシェ・トリオ/ジョルジュ・ムスタキ/フィリップ・アントルモン/ミッシェル・ポルナレフ/アラン・パリエール/マイルス・デイビス七重奏団/ウィーン・モーツァルト少年合唱団/ジョルジュ・ジュバン/ベニー・カーター・カルテット/ミハエル・シェッファー/マルガリータ/プラハ少年少女合唱団/ソニー・ロリンズ/ヴァーツラフ・フデチェッグ/ペトラ・クラーク/ガトー・バルビエリ九重奏団/エドワール・タール/セヴリー・ガッゼローニ(おそらく、イタリアのフルート奏者Severino Gazzelloni)/カウント・ベイシー楽団/カーメン・マックレー/ロス・プリジャンテス
1974年
3月31日が最終回。大河ドラマは「勝海舟」(渡哲也、松方弘樹)
ウィーン・フィル/ラドゥ・シミオン・オーケストラ/セヴェリーノ・ガッゼローニ/レーヌ・フラショー/フェアポート・コンベンション/オスカー・ピーターソン/ボビー・ソロ/リダ・ルー/カーメン・マックレー/ダリダ/ポール・トルトゥリエ/メキシコ民族舞踊団アストラン
全出演者の名をインターネットや音楽書などで調べてみた結果、全体の9割以上の人の概要がわかった。私が知らなかった名前は、クラシックの歌手や演奏者が多かった。こういう身元調べをやるまでもなく、NHKの好みがよくわかる。音楽ジャンルで言えば、決定的に欠けているのはロックである。ジャズを除いたアメリカ音楽である。ロックバンドとは思えないザ・タイガース(1967〜71)でさえ、長髪でエレキバンドという理由で、NHKには出演できなかった時代なのである。ロックのような不良音楽を、良識のNHKが放送するわけはないのだ。それはそうと、69年に来日したディジー・ガレスビーの演奏も、この「世界の音楽」で見たような気がしていたが、出演者リストに名前がないので、別の番組だったらしい。
アメリカ音楽といっても、カーペンターズのようにNHK好みのバンドや歌手はいくらでもいるが、おそらく出演料などの点で折り合いがつかなかったのだろう。ただ、1966〜69年にNHKは「アンディ・ウィリアムス・ショー」を放送しているので、アメリカ音楽はそちらでという考えもあったのだろう。1965年に日本テレビで半年間「エド・サリバンショー」が放送された。69年から70年あたりだと思うが、「トム・ジョーンズ・ショー」も放送されていた(どの局だったか、記憶にない)。こういう音楽番組のことを考えていると、「ザ・モンキーズ」(TBS 1967〜69)や、「ゴーゴーフラバルー」(日本での放送時期は不明、アメリカでは1965〜66)や、「ソウルトレイン」(同じく日本での放送時期は不明。アメリカでは1971〜2006)といった番組などが次々に頭に浮かぶのだが、私の関心は英米ポップスではなく、世界の音楽なので、そういった番組について詳しく調べる気はない。労音や民音の活動も加えて、世界音楽を考えるという構図も浮かぶが、それは音楽ライターにお任せしよう。
日本での外国人ミュージシャンの活動には昔から興味があり、いくつか資料も読んできた。その1冊、『熱狂の仕掛け人』(湯川れい子、小学館。なんと、この本、奥付けがない!)を読んで、プロモーターの横山東洋夫(よこやま・とよお)をインターネットで調べたら、次のサイトに彼が手がけたミュージシャンのリストが載っていた。これを見ると、彼がコンサートのために日本に呼んだジャズミュージシャンが、「世界の音楽」にも出演したこともわかった。http://www.peidollspear.com/yokoyamatoyoo.html
以上で、日本人の世界音楽体験資料集めの遊びは、今回で終わる。またいつか、遊べる企画を思いついたら、調べることにしよう。