580話 排泄文化論序章朝鮮編  その9  

 続おまる


 この排泄文化論の「その3」で書いた肥桶の話を友人にメールしたら、「ソウルの国立民俗博物館で、その現物を見てきたばかりですよ」という返事をくれた。『庶民たちの朝鮮王朝』に出ている肥桶の写真が、まさにその博物館所蔵のものだ。肥桶を展示している国立博物館なんて、とんでもなくすばらしいではないか。その昔、私は食文化の展示資料を見に博物館に行ったのだが、そのとき肥桶を展示していたかどうか記憶がない。展示品カタログを買ってきたのだが、その現物がみつからない。この博物館のホームページには、展示物のカタログは載っていない。
 ドラマ「ぶどう畑のあの男」に出てきたおまるは金属製のものだったが、ほかにもいろいろなおまるがあるかもしれないとネット検索していたら、意外な場所で展示していることが分かった。東京の麻布にある在日韓人歴史資料館で、展示しているのだ。
 http://www.j-koreans.org/exhibit/exhibit_03.html 
 こちらは、金属製の物もあるが、写真説明は違っている。
 http://www.mindan.org/sidemenu/sm_hundred_21.php
 展示品されているおまるは、戦時中に朝鮮から持ってきたものもあるようだ。なぜ、わざわざ持ってきたのかはわからない。嫁入り道具として親からもらったものだったからか、いままでの習慣だったから必需品だと思ったからか。幸か不幸か、日本でも役に立ったと解説にある。
 日本にやってきた朝鮮人たちが住みついたのは、河川敷や埋め立て地や湿地などに建つバラックだった。人口密集地なのに、共同便所は1か所か2か所しかない。おまけに、夜は足元が悪く、暗い。だから、おまるは必需品だった。そういう歴史的意味があって、展示しているそうだ。
 おまるを、韓国語でヨガンという。私が知っているヨガンは旅館のことだが、おまるの方に漢字をあてれば「尿罐」、つまり「尿缶」だから、屎瓶と訳した方がいいのだろうが、この排泄文化論では屎瓶も含めて、すべて「おまる」と総称している。しかし、より正確な知識も得ておいた方がいいだろうと、韓国語辞典で「おまる」を調べると、 변기という語が出てきた。ピョンギ(漢字で表記すれば、便器)は、「便器、おまる」という説明があった。
 韓国のおまる、ヨガンを求めて情報を探していたら、重要なことを忘れていたことに気がついた。私が大好きな韓国映画「おばあちゃんの家」(2002)にも、おまるが登場していたことを思い出したのだ。おばあちゃんの家に預けられた悪ガキが、おばあちゃんが使っているおまるを割ってしまうシーンがあった。あの映画を見た都会に住んでいる若者たちは、割ったのがおまるというものだと、わかっただろうか。
ネット上には、おまる(ヨガン)の画像がいくつもある。例えば、・・・
 http://www.lifeinkorea.com/culture/tools/toolsj.cfm?xURL=house
 http://blog.daum.net/_blog/BlogTypeView.do?  blogid=07qvG&articleno=13091819&categoryId=306725®dt=20101031172816
 http://blogs.yahoo.co.jp/r09200829/50037421.html
 http://www.ohmynews.com/NWS_Web/view/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0001395160
 もちろん、ハングルで“요강”で画像検索すれば、いくらでも見つかる。興味がある人は、このハングル部分をコピーして画像検索するといい。
 遅ればせながら、いままで書いてきた便所の資料映像が、次の博物館紹介でわかる。便槽がなくて、足をのせる石がふたつある便所の模型もよくわかるように展示している。韓国水原のトイレ博物館「解憂斎」(ヘウジェ)の紹介記事。
http://www.seoulnavi.com/miru/1849/