625話 パソコン導入直後 その2

 インターネットに関して思い出すことはいくつもあるが、これはそのひとつ。
 私がパソコンを買ったちょうどそのころ、たけし軍団がラジオでしゃべっていた話だ。芸人の話だから、話を盛ってあるかもしれないが、こういう内容だ。
「殿、インターネットってすごいですよ。とんでもない画像が見放題、無修正なんですから」
 「なんだ、それ?」
 「インターネットです。すごいんです。日本では見てはいけない映像が、丸出し、無修正、裏ビデオが見放題ですよ!」
 「本当か?」
「 ええ、本当です。すごいです。丸出しです」
 「そうか。よし、そのインターなんとかってのをだな、すぐ買って来い。秋葉原に行けばいいんだろ」
 「いや・・・、そういうわけじゃなくて・・・」
 「なんだ、高いのか? 10万か20万か? いくらなんでも、100万はしねーだろ」
 「いや、売っているわけじゃなくて、なんて言えばいいか、コンピューターのですねえ・・」
 と、パソコンをまったく知らない殿(ビートたけし)に、インターネットとはどういうものか説明するのに苦労したという話だ。
 それからしばらくして、ビートたけしはパソコンを手に入れ、自分の名前を検索し、2chを読み、怒り、「俺が、本物のたけしだ。でたらめばかり書いてんじゃない!!」と書き込みをしたが、誰にも信用されず(当たり前だ)、「くやしいから、ウチの電話番号を書いちゃおかと思ったぜ」。
 インターネットではないが、思い出した話があるので、ついでに紹介しておこう。もう20年以上前になるか、アジアの某国に遊びに来た組関係者御一行の話。その国では携帯電話が日本よりもはるかに普及していて、それほど金持ちでもない者が携帯を持っていることに驚いた親分、「ここでは、携帯は安いのか?」とガイドに聞いた。はい、これこれですと携帯本体の値段を伝えると、「おお、そんなに安いのか。おい、土産にするから、10台ほど買っておけ!」と子分に、指示。あわてたガイドが、携帯電話のシステムを説明したが、まったく理解してもらえなかったという。
 携帯電話を土産物にという話は、ある日本人に聞いたのだが、実は、私はほとんど笑えなかった。その当時、携帯電話を持っていないから、システムがわからない。今でも、まったくわからない。タイのケータイは日本では使えないというという話を小耳にはさんでいたので、「土産に」という話を聞いて笑うふりくらいはできたが、日本とタイ、両国のケータイ事情が具体的にどう違うのか、私はいまもわからない。
 ケータイもパソコンも、ほとんどわからない。テレビの仕組みはわからなくても使える。スイッチを入れ、放送局を選べば、それで番組を楽しめる。ところが、パソコンというのは、買っただけでは使えない家電だった。いろいろ覚えることが多く、多少覚えたくらいではわからない不都合がいくらでもあった。しかし、私は勉強などほとんどせず、「ちょっと使えればそれでいいや」程度に思っていて、大やけどをすることになった。
 恐ろしいことに、ウィルス対策ソフトというものを知らなかったのだ。ウィルスというものが悪いことをするということは知っていたが、「いけないサイト」にアクセスしなければ問題ないのだろうと思い、見てはいけないサイトは見なかった。ところが、例えば、ベトナム戦争時代に、タイでしばらく過ごしたことがある米兵の思い出話を読んでいて、”next page”とか、”photo”などという文字をクリックすると、たちまちイケナイ映像が飛び出てきて、元のページに戻れなくなり、強制終了するしかない事態がときどきあり、しばしばフリーズするなどいろいろ不具合がでてきて、ついには業者に頼んで初期化してもらうこととなった。
 「イケナイ画像なんか見ていないのに、こんなことになって・・・」と業者に話したが、まったく信じていないだろう。よくある言い訳としか思わず、「はいそうですか」と事務的に返事をして、しかし心の中では「ウソつけ!」と思っていただろう。人の誤解を解くには難しい。それ以後は、もちろんウィルス対策ソフト(ノートン)を入れている。いまは、ちょっと油断していると、マカフィーが忍び込んでくるなあ。共犯者はAbodeだな。実害はないが、面倒だから、すぐに削除している。