683話 きょうも散歩の日 2014 第41回

 雑話いろいろ その4


■この旅物語の第20回で「観光地は嫌いだ」と書いた。矛盾するようだが、突然,遠景に姿を見せる特異な建造物に見とれることはある。ある日のこと、地下鉄グロシアス駅近くからセントロ(中心地)方面にどうやって帰ろうかと考えた。すでにトラムには乗っているし、地下鉄もおもしろくないから、歩いて帰ろうと考えた。ラス・コルツ・カタラナス大通り(Gran Via de les Corts Catalanes)という広い通りを歩いていたら、古めかしい茶色の大きな建造物が見えてきた。気になるのでバッグからガイドブックと地図を取り出して調べてみたら、それはモヌメンタル闘牛場だった建物だとわかった。2011年まで現役だったバルセロナ最後の闘牛場で、いまは博物館になっているらしい。
http://utravelnote.blog123.fc2.com/blog-entry-1234.html
 こんな外見の元闘牛場で、私の目と体がこの建物の前で止まったのは、イスラムキリスト教の両方の要素が混ざり合ったムデハルという建築様式のせいだ。ちなみに、ネット上の情報では、こことスペイン広場近くにあるラス・アレナス闘牛場(現在はラス・アレナス・ショッピングセンター)とを取り違えて紹介している例がとても多い。
 このモヌメンタル闘牛場は四つ角にあり、北を向くと大通りの先にサグラダ・ファミリアが見え、東を向けば水道会社のオフィスビル「トラ・アグバル」が見える。まったく期待も予想もしていなかった時に見えるサプライズ。予想もしていなかった建物が、交差点の向こうに突然見えると、呆然として眺めてしまう。トラ・アグバルの画像をふたたび紹介しておこうか。
https://www.google.co.jp/search?q=%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%B0%E3%83%90%E3%83%AB&biw=856&bih=759&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ei=iIp8VOD6MqLFmwXT64HgCQ&ved=0CEMQsAQ
バルセロナ市歴史博物館に行った。この不運な男が博物館に行ったら、またしても閉館中かと嫌な予感がしたのだが、なぜか「今日は、入場無料です」ということで、タダで入れた。不運な男にも、たまにはこういう幸運な日があってもいい。貴族の館の修復工事をしていたら、地下からローマ時代の遺跡がでてきて、その遺跡を覆って歴史博物館にしたという施設だ。何があるのか予備知識なしに行ったのだが、「おお!」と感動したのが、ガルム(garum)の工場跡があったことだ。説明板にはgarumとだけ書いているだけで、どういうものかという説明はまったくない。入館者のほとんどは、「ガルム」と聞いて、タイのナムプラーのような魚醤油のことだとすぐにわかるいのだろうか。ガルムを知っている日本人は1000人は越えるかもしれないが、3000人はいないと思う。そんなもんでしょか、森枝さん?
■スペインのスーパーマーケットを、「臭い」と感じたことはないですか? 肉と魚の生臭さに何か別の臭気も加わって、臭い。1店だけのことではない。その日のその時間にたまたま臭かったということは考えられないから、おそらく、いつも臭いのだろう。ということは、店員も客もその強烈な臭気が気にならないということだ。ただし、屋内のサンタ・カテリーナ市場にはその臭気はない。日本のスーパーでも、ちょっとにおうことがある。
■ランブラス通りの生ハム屋の店頭で商品を見ていたら、かなり訛りの強い英語の話し声が途切れ途切れ聞こえた。「スペイン人は親切・・・・、お腹がすいている。・・・半額にならないか・・・・、おいしそう・・・」。どうやら、商品を半額に値切っているらしい。西洋の常識では、値切れない場所だが、彼が属する社会の常識なのか、彼個人の常識なのかはわからないが、こういう店で、半額に値切れると思っているらしい。多文化社会、異文化まみれの社会は、価値観の違う文化が衝突して、面倒なことが多いなあと思った。多民族社会というのは、こういう面倒臭いことが多く起こることなのだ。
 とはいえ、その昔、長年日本を離れていた日本人が、神田神保町に日本語の辞書を買いに行きたいというので付き合ったことがあったのだが、書店で彼女が「辞書の箱はいらないから、安くしろ」と値切り始めたときは、そっぽを向いて赤の他人の振りをした。辞書を買った彼女のセリフ。「日本人は、要らない物(辞書の箱)まで無理に売りつけて、ひどい」。う〜む。
■映画やテレビドラマの「ジェネラル・ルージュの凱旋」など海堂尊作品に登場する速水医師がいつも口にくわえているのが、「チュッパチャプス」(テレビドラマでは別のアメらしい)。このロリポップ(棒つきアメ)には「Chupa Chups」とあるが、日本では「チュッパチュップス」ではなく、「チュッパチャップス」とカタカナ表記している。1958年にバルセロナのGranja Asturias社が売り出したロリポップで、花びらのデザインは、ダリ。
 http://www.chupachups.jp/
 ガウディが設計したカサ・バトリョの所有者は、この菓子を売り出した創業家。この製菓会社は、イタリアとオランダの製菓会社が合併してできたペルフェティ・ファン・メレ社が買収した。
https://www.casabatllo.es/ca/