700話 台湾・餃の国紀行 2015 第5話

 春節の外食事情  おにぎり


 春節になっても、コンビニはやっていることはわかっている。デパートやショッピングセンターは稼ぎ時だから、休業するわけはないとわかっている。これは東アジア&東南アジアの常識だ。台湾が、私の常識の通じる国であってよかったと思った。これがヨーロッパなら、外食はほとんど不可能になったはずで、台湾にいてよかったとつくづく思った。コンビニやデパートの営業は想像していたとおりだが、夜市(夜の屋台街)も休みなく営業していて、食事にはまったく困らなかった。
 夜市をやっているとは想像していなかったのだが、テレビニュースで、「春節で稼ぎますよ」という屋台主のインタビューと共に歳末風景が伝えられ、翌日の夜、近所の寧夏夜市に行ってみたら、夜市だけではなく、その通りの両側の飲食店も営業していて、食べたいものは何でもそろっている。昨年は、淋しいヨーロッパの外食事情を体験しているので、光に包まれた路上を見て、「台湾万歳!」と叫びたくなる風景だった。
 宿近くでしばしば足を運んだのが、台北駅にあるショッピングセンター「微風」の食堂街だ。台北駅は大きな吹き抜けになっていて、外周の2階部分がすべて食堂街になっていて、数十軒の店が並んでいる。春節の夜にここに来てみると、キャスター付きのスーツケースを引っ張っている人たちであふれていた。鉄道などで台北に着いたところなのか、これから台北を出るところなのかわからないが、とにかく大変な混雑だった。そこで、これをいい機会に、人気の店調査をやってみようと思った。どの店も混んでいて、行列ができている店もある。「この時期のこの時間に混んでない店は終わりだな」と思って歩いていると、閑散とした店があった。この食堂街にはカレー店コーナーがあって、各種のカレーを出す店が何軒か集まっているのだが、残念ながらすいていた。近年、台湾ではカレーがブームで、街にカレー専門店もできているのだが、カレーの力はまだまだ弱いのだろうか。ラーメン店は長蛇の列だ。お好み焼き&焼きそばの店も行列ができている。
 食堂街を一周してみてわかったのは、もっとも長い行列ができていたのは、女性用トイレの前だった。台北駅と地下街は広いため、トイレを探すなら、ここがいちばんわかりやすいという地理的影響もあると思う。この食堂街巡礼は何度もやったので、カレーコーナーが満席だった日も見ている。何事も一度で結論を出さない方がいいという教訓だ。
 春節に食堂がやっていなくても、コンビニがあればいいと思っていた。うまいものが数多くある台湾に来て、コンビニの飯じゃ淋しいだろうと思うかもしれないが、台湾のコンビニ飯もまた食文化研究者としては興味の対象なのだ。前回は、7−11でインドカレー弁当を食べた。レンジで温めてもらい宿で食べたのだが、これがなかなかのものだった。今回も、なにかおもしろい食べ物があるかどうかチェックしてみたくなった。そういう意味で、コンビニ食は私には楽しい調査であって、けっして淋しい飯ではない。
おにぎりを食べた。以前、高雄駅のコンビニおにぎりは食べたことがあるが、7−11のおにぎりは初めてだ。1個が20〜25元だから、台湾の屋台飯と比べると、それほど安くない。麺類が50元前後で食べられる国だ。
 鮭とトビコ(トビウオの卵)のおにぎりを買った。包装の開け方など日本のものとまったく同じで、まったく同じ味だろうと思ったのだが、のりに味がついていた。韓国のりだろうか。不注意にも、ラベルを読むのを忘れてしまったのだが、このことを帰国後にタイの友人にメールすると、「タイの7−11のおにぎりには、『韓国のり』と表示がありますよ。味付きです」という返信が返ってきた。
 おにぎりといえば、雑語林の621回に中国のおにぎりについて書いたが、台北を散歩していると、おにぎり屋がいくらでもあるのがわかる。もち米の飯を布巾か、ビニール袋でくるんだ布巾の上に広げ、具をのせ、太い円筒形にまとめる。画像も豊富にあり、これもそのひとつ。http://www.taipeinavi.com/special/5000874
 台湾のおにぎり事情に関しては、次のような情報もある。ブログ「濱屋方子の台湾日記 台湾・コンビニのおにぎり」
http://taiwanyuri.blog.fc2.com/
 コンビニ弁当を食べるチャンスはなかった。昼飯が遅くなって、夜になってもあまりお腹がすいていなかったり、夜になって買いに行ったら、ほとんど売れていた(日本のように、すぐ補充する体制にはなっていないようだ)。そういうわけで、食べるチャンスがなかった。台北駅のそばにいたから、一度くらいは駅弁も買って食べようと思っていたのだが、その機会も逸してしまった。これは、またの機会にすることにしよう。