1138話 ダウンジャケット寒中旅行記 第22話

 落穂ひろい その2

■餃子と焼きそばが大好物だ。散歩をしていて古本屋の前を通りかかると立ち寄らずにはおれないのと同じように、餃子と焼きそばの看板を見てしまうと、心と胃袋がひどく刺激さ、焼きそばなら店に入ってしまうこともある(餃子は皮から自分で作るので、店ではほとんど食べない)。
 外国の場合はその心配がないかというと、スペインの場合、焼きそばにやられる。焼きそばの艶やかな肌を見てしまうと、「スペインに来たら、当然スペインの料理だろ」という原則など忘れて、店に入りたくなってしまう。マドリッドの焼きそば屋は、2016年よりもさらに増えていた。だから、散歩をしていれば、焼きそばの看板にいたる所で出会う。焼きそば屋は、店名に”WOK”(中華鍋)という語が入っていることが多い。
 次の写真のような、垂涎の写真を見てしまうと、どうしても食べたくなる。自室で食べようと思ったので、宿のすぐ近くの店で買った。期待値が高いから、実際に口にすると、それほどの喜びでもないのだが、それでもスペインの安飯よりはうまいと思う。

 WOKがつく店は、焼きそば専門店で、テイクアウトのほか、店によっては椅子やテーブルもある。

 こういう看板写真を見てしまうと、「今は、スペイン料理はいいか」という気になる。

 部屋に持ち帰った焼きそば。前回も失敗したなと思い出したのは、まずい鶏肉入りにして高くなったこと。これで、5.95ユーロ。量が多いから、高くはないが・・・。

 WOKがつかない店も多くなった。この店は、すしのほか、ラーメンなどがあるが味噌汁があるのに驚いた。

■テレビを見ていたら、「agua(水)! agua(水)!」という声が聞こえてきた。画面を注視していたら、便器のコマーシャルのようで、なんと洗浄機付き便器の広告だ。当然日系メーカーかと思ったら、ROCAの文字。知らない会社だから調べたら、スペインの衛生機器メーカーらしい。ビデの伝統のある国では、受け入れられやすいのだろう。
 テレビCMと言えば、マツダCX-5のもの。画面に「人馬一体」という漢字が出てくるが、誰も読めないだろう。そのあとナレーションが「ジンバイタイ!」と入る(日本人の声ではない)が、視聴者にはそれでもやはりわからないはず。日本のCMでも、視聴者がわかるかどうかなど考えずにフランス語のナレーションをかぶせるようなものだ。外国語は異国情緒を醸す効果音なのだ。

バルセロナで初めて行った食べ放題レストランのフレスコ。前回の滞在で、マドリッド支店にも行き、「うまいものはない」という結論だったのだが、今回も行ってしまった。以前は、平日昼間が9.95ユーロ、土日と夜は11.95ユーロだったのだが、全日すべて9.95ユーロに値下がりしていた。ふたたびフレスコに行った理由は、みっつある。ひとつは生野菜をたっぷり食べたかったからだ。ゆでたジャガイモもあるから、自分でポテトサラダも作ることができる。ふたつ目は、コーヒーをがぶがぶと飲みたかったからだ。エスプレッソほどの量のアメリカンを6杯くらいは飲むから、コーヒーだけで6ユーロ分くらいになる。3番目の理由は、果物が食べられることだ。レストランで果物を注文すれば高額だし、スーパーで買うと量が多い。
 というわけで、パスタサラダを2皿食べ、コーヒーを飲みながらケーキとオレンジを食べた。明るく比較的静かなので、ノートにメモを書いたり本を読んだりするには最適な場所だ。そして、店内や客を観察する。カウンターの調味料のコーナーに、タバスコがあった。アメリカ人と日本人客のためか。アメリカ人の団体は、自分のテーブルにケチャップを持って行き、使い果たし、「おかわり」を注文していた。客の、ナイフとフォークの使い方を見ているだけでも、興味深くて楽しい。

 最初にサラダやスープ、飲み物を取って、料金を払うシステムだ。あとは食べ放題。飲み物はビールもジュースもコーラも1杯は料金に含まれているが、ペットボトルの水は別料金。

 ピザやパエジャや、鳥や魚料理もあるが、パスタサラダが質と量の両方で満足。そのあと、小さなケーキと果物と、大量のコーヒーを飲む。