1322話 スケッチ バルト三国+ポーランド 41回

 スターリン・ゴシック

 

 プラハ旅行記で、1950年代に建てられた偉そうな建物のことを書いた。

1232話(2019年2月2日)

https://maekawa-kenichi.hatenablog.com/entry/2019/02/02/101744

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 プラハスターリン・ゴシック、インターナショナル・ホテル。1951年から8年かかって建築したそうだ。

 

 スターリン時代にソビエトの威光を誇示するために建設したビルで、今はインターナショナルホテルになっている。今年春、あのコラムを書いているときにいろいろ調べていて、ポーランドワルシャワにもよく似た建物があると知ったが、まさか数か月後に実際にその建物を見ることになるとはその時は思ってもみなかった。今、このコラムを書いていて思い出したのは、この手のスターリンゴシック建築を初めて見たのはプラハでもワルシャワでもなく、モスクワだったということだ。見ただけでなく、泊っているのだ。当時の名称をホテル・ウクライナと言った。現在はラディソン・ローヤルホテル・モスクワとしてまだ健在だ。

http://hoteresonline.com/articles/3669

 当然ながら、このホテルに泊まりたくて泊ったわけではなく、潤沢な旅費があったわけでもない。1975年、横浜発ロシア経由ロンドン行きの片道ツアーに参加し、メンバーが宿泊するように指定されたのがそのホテルだった。当時のソ連では自分で勝手に安い宿を探して泊まるという自由はなかった。高いホテルに無理やり宿泊させられたのだが、その宿泊費がいくらなのかは知らない。そして、改装した今と違って、当時はこけおどしだけの建物で、内部は暗く、巨大ではあっても豪華ホテルという感じはまったくしなかった。各階に宿泊者監視人がいるようなホテルだ。

 ワルシャワに行く前に出会ったのが、リーガの科学アカデミー。1961年完成の108メートルのビル。気にいらないデザインだが、リーガ中心部を眺めるには悪くない場所にある。陰気臭いオフィスビルだが、入場料5ユーロを支払い、エスカレーターで一気に展望デッキに上がった。

 

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 ラトビアの首都リーガの科学アカデミー。陰気な場所にある。

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 プラハスターリン・ゴシックよりも手が込んでいる。現在はオフィスビルだから、展望台に行く人は専用のエレベーターで上がる。どういう業務をしているのかという興味があったが、自由にフラフラすることはできなかった。

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 展望台は屋上ではなく、最上階よりもちょっと下のベランダに出る。四方を見渡せるのはいいが、この日は曇りだった。展望台から旧市街方向を眺める。写真の下に見える大きな屋根は市場。その向こうに線路があって、ここが駅裏だとわかる。高い塔は、聖ペテロ協会。

 ソビエトの権力を見せつめるような建物だから、ラトビア人は嫌っているという話を読んだことがあるが、「子供のころ、父に連れて行ってもらって何度か行ったことがあるんだよ」と懐かしそうにしゃべる人に会って、まったく嫌悪感を抱いていないようで、「もしかして・・・」と思い、話を聞いていくと、ロシア系住民だとわかった。リーガ市民の半分はロシア系という土地だ。「対ロシア感情」といっても一様ではない。

 

 ワルシャワスターリン・ゴシックは文化科学宮殿という。高さ237メートルはポーランドでもっとも高い建物だ。「地球の歩き方」では1956年完成ということになっているが(「1952年から4年もかけて建てられた」)とあるが、ウィキペディアではポーランド語版でも1955年完成となっている。この建物に登ってワルシャワを見たいという気になれなかったし、併設の博物館にも興味がなかったので、内部に入っていない。

 

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  この文化科学宮殿はワルシャワ駅のすぐ近くにあり、繁華街のそばでもあるので、この近辺はよく歩いたが、内部に入ってみようと思わなかったのは、古いワルシャワナチスによって焼き払われたからかもしれない。

 

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 だから、この2枚しか撮っていない。

 

 長々と書いてきた建築話は今回で終わり、次回からはまた雑多な話が始まる。そろそろ、最近読んだ本の話もしたいのだが・・・。