食べる話 その3 冷たいボルシチ
今回の旅でもっともうまいと思ったのは、ピンクの冷たいスープだ。初めて見たときは、人口着色料を使ったような鮮やかなピンクで、気味が悪いと思ったのだが、気温が30度を越えた暑い日に、日本のコンビニなどにもよくあるガラス張りの冷蔵庫に入っているものが気になって、「それ、何?」と聞いたら、「スープ」というので、注文してみた。
表面に振りかけている植物はディルということはわかる。写真で見ているハーブというだけで、じつは口にした記憶はない。たぶんセリ科で、だから臭いだろうなと覚悟をしたのだが、頼りないほど香りが弱いから気にならない。スープの味は、すこぶるうまい。暑い夏には、絶品と言っていい。以後、何度も食べることとなった。
セリ科のハーブをこれだけ振りかけられたらとうてい食えない臭気に包まれるような気がしたが、あっけないほど匂いがない。実は香るらしいが・・・。
これがディル。リーガの市場にて。
このスープは、リトアニア料理ということになっているらしいが近隣の国でも食べられている。このスープの正体は、サワーミルクが入ったボルシチである。ビーツで真っ赤なボルシチにサワーミルクを入れたので、ピンクになったというわけだ。このスープを、リトアニア語でŠaltibarščiaiシャルティ・バルシチェイという。「冷たいボルシチ」という意味だ。
料理法の動画がいくつもあるが、日本語字幕入りのものを紹介しておこう。
https://www.youtube.com/watch?v=pi0fmS4Nbvk
スープの具は店によって違うのだが、それほど安い店でなければジャガイモやゆでたまごが入っているうえに、パンがつく決まりになっているようで、これだけで軽い昼食になる。
リトアニアのカウナス。腹が減ってたまらない。カフェでも食事ができればいいと思って入った店だが、ここが今回の旅でもっともうまい店だった。「本日のスープ」を注文したら、やはりシャルティ・バルシチェイが出てきた。スープにはゆで卵とズッキーニも入り、表面をカリッと揚げたジャガイモがついているから、小食になっている私の胃袋では、すでに半分満腹になった。
メインは鶏肉のパスタ。左はチーズを焼いたもの。右は薄切りニンジンの素揚げ。これもうまかった。スープは2.20ユーロ、パスタは5.90ユーロ、レモン入りの水は無料。合計8.10ユーロは、日本円にして1000円ほどだが、感動的にうまかったので、チップを入れて合計10ユーロ支払った。「当方、レストランでございます」という店構えの店で食べると、この3倍くらいは取られる。
リーガの野外建築博物館の野外食堂の「本日のスープ」も、このサワーミルク入りボルシチだった。チリ(多分、パプリカ)を入れて赤くなったソーセージ、皮つきポテトはうまいが、これで合計7ユーロ。場所柄、高いのだ。客の多くはビールを飲んでいる。食事はまともなところで食べる予定なのだろう。私はほぼ1日いたので、しかたなくここで食事をした。