食べる話 その2 好きな場所 その2
ヨーロッパ中部北部東部の料理、例えばイギリスやドイツ周辺諸国など、どうも評判が悪い。ありていに言えば、「まずい」という評判が高く、私も「そうだろうな」と思っていたが、近頃、「それは違うな」と思い始めた。「まずい」のではなく、「『とりたててうまい、すばらしくうまい』と賛美する外国人はさほど多くない」というのが正解のような気がする。全体的に言えば、「可もなく不可もなく食える」レベル以上の、まっとうな料理を私は食べてきた。
一方、うまいと評判のタイ料理だが、バンコクのその辺でガイドブックなどは見ずに適当に食べれば、辛い、臭い、酸っぱい、苦い、甘いと、外国人にはつらい料理がいくらでも出会う。香辛料や発酵食品など、口や鼻に合わない料理がいくらでもあるということだ。ところが、チェコにしてもバルト三国にしても、外国人の舌は受け付けないという料理は、多分ほとんどない。「感動するほどうまいわけではない」という感想はあっても、タイの辛い料理や昆虫食のように「こんなもの、食えるか!」という感想はないと思う。バルト三国の食べ物で、「これはかんべん!」と思いつつ、もったいないからガマンして全部食べたのは、リーガのバスターミナルで買ったサンドイッチだけだ。時間がないので慌てて買ったサンドイッチはゆでた鶏肉が入っていると予想して、たしかに鶏肉が入っていたのだが、それに加えてブルーベリージャムも入っていた。カモのオレンジソースのように、鶏肉にジャムである。私の乏しい体験で考えると、日本人には苦手だろうなと思われるヨーロッパの料理は、悪名高きニシンの缶詰(シュールストレミング)のような特殊なものを除けば、血のソーセージやブルーチーズ(私は大好きだが)くらいか。ああ、あとエスカルゴ(カタツムリ)やヒツジの脳みそもだめか。
さて、前回に続いて、好きなレストランの話だ。
タルトゥにあるエストニア国立博物館のレストランは、写真のように開放的な広間にある。博物館そのものもすばらしいのだが、その展示物の印象よりもこのレストランが記憶に残っている。20品ほどの料理から自由に選んでひと皿7ユーロ。コーヒー1ユーロ、デザート2ユーロ、つまり合計すれば10ユーロに設定されている。大阪の国立民族学博物館のレストランは高くてまずい。東京の国立博物館はホテルオークラの運営だから、高い(比較的安い施設もあるが・・・)。
タルトゥの市街を抜けて、こういう黄色い花の田舎道を歩いていくと、近代的な国立博物館が見えてくる。市街から歩くと20~30分かかるが、あの道は歩いたほうがいい。展示のレベルがわからないから、博物館の外観は撮っていない。
レストランは部屋ではなく、両側がガラス張りの広い通路の感じだ。天井が高く、開放感がすばらしい。
食べたいものがいくつもあるから、ついついいろいろ取ってしまう。パスタを取っているのに、コメも取ってしまった。大量の肉を食べたいという欲望はない。コップの水に薄切りキューリ。この水は無料。
好きな飲食施設の3番目は、リトアニアのビリニュス大学の食堂だ。大学見物をしていて食堂を見つけたので、昼飯にした。ここは教職員用の食堂かもしれないが、2階もあって、座席数は百くらいはありそうだ。私のような部外者の出入りも自由で、カフェテリア方式。食堂のおばちゃんも英語ができるので、料理の説明がきけた。
大学の食堂だが、客層を見ても、教職員食堂かと思ったが、ほかの食堂は見かけなかった。2階にも広い客席がある。
精緻にして優雅で安価な昼食。
窓の外にこういう風景。
日記に料金の明細が記録してある。レシートのリトアニア語を想像して解読した。例えば、salotoはサラダ、citrinaはレモンという具合だ。以下、単位はユーロ(当時、1ユーロ=126円)。サラダ1.60、チキンカツ&マッシュポテト3.20、水0.50、レモン0.05。合計5.35、日本円にして約675円。食後コーヒーを飲んだ。「コーヒーが1.30で、写真のサラダが1.60というのが、どうも納得がいかない」と、日記のメモ。
写真は撮らなかったが、タリンやワルシャワやビリニュスのゲストハウスのダイニングルームも、雑談の場として好きだった。