◆音楽
今度は真正面から音楽と経年変化の話を。
たぶんイギリスのテレビ番組だったと思うが、ビートルズやローリング・ストーンズのメンバーがまだアマチュアだったころ、どんな音楽を聞いていたかというインタビューで、1950年代から60年代初めのイギリスの少年たちが好んで聞いていた音楽を回想するという番組だった。
ミック・ジャガーは、いろんな音楽を聞いていたといくつものジャンルをあげたが、「ただね、アッカー・ビルクは勘弁してくれって感じだった」といった。Acker Bilkね、なるほど。
その放送を見る1年ほど前のことだ。ラジオから流れて来た昔の音楽が気になった。クラリネットの演奏物だ。中学生か高校生のころにラジオでよく耳にしていたが、曲名も演奏者も知らない。懐かしくて、なんだか、ちょっといいのだ。すぐさま、そのラジオ番組のホームページで曲名をチェックした。曲名も演奏者名に心当たりはない。しかし、確実に、あのころ聞いていた曲だ。Acker Bilk「白い渚のブルース」(1961)。すぐさまYoutubeで聞き直し、ほかの演奏も聞きたくなってCDを注文した。
1950年代から60年代に、こういう音楽がラジオからよく流れていた。パーシー・フェイスやマント・バーニのような音楽は、「ムードミュージク」という総称で呼ばれていた。静かな夜の雰囲気いっぱいの大人の音楽だから、小中学生のガキが好む音楽ではないのだが、映画が好きな私は、映画音楽を演奏するときは「ちょっと、いいな」となり、タンゴやマンボなどもこういう音楽で知った。
それから何十年もたって、すっかり忘れていたムードミュージックを聞きたくなり、CDを次々と買った。まさか、この手のCDを買うようになるとはねという驚きと、「昔の音楽は味があったよね」という感想もある。電気楽器が入っていないと、居心地がいいのだ。コンピューターで作った音楽は、どうも肌に合わない。
いわゆる「懐かしの名曲」、英語だと”Oldies”なのだろうが、私が買い集めたのは、1950年代の音楽だ。その当時はまだラジオはあまり聞いてない時代だから、なつかしさはないが「いいなあ」と感じるのだ。ロックンロールやドゥワップなどで、わかりやすく言えば、映画「アメリカン・グラフィティー」で流れていた音楽だ。映画は1962年の設定で、ビートルズ登場の直前の音楽事情だ。その時代の音楽は、カーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」に出てくる“Every Sha-la-la , Every Wo-o-wo-o”である。これはバックコーラスで、竹内マリアの歌によく使われているし、内山田洋とクールファイブの「わわわわ~」というコーラスである。
そんなわけで、Youtubeでムード歌謡も聞いてみた。昔は嫌いだったが、今はもう消滅した音楽ジャンルなので、なつかしさはある。ムード歌謡の音楽的背景は、ハワイアンだったりラテンやドゥワップなどだから、共感する部分があるのだ。
私は昔からいろいろな音楽を聞いてきた。例外的に嫌いな音楽は、ベルカント唱法と合唱によるオペラやミュージカル、そしてアイドル歌謡とフリージャズなどだ。「いかにも芸術的な」現代音楽も嫌いだ。ロックは、好んではあまり聞かないというのは、年月を経てもほとんど変わりない。
音楽趣味の変化の話は長くなりそうなので、詳しくは別の機会にたっぷり書くことにする。