2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

837話 神保町で火野葦平に出会う  その5

火野の自殺は、体調不良やうつ病が直接の原因ではあるが、同時に「戦意高揚の協力者」という過去の重圧が、戦後の火野を常に苦しめてきたということもある。だからこそ、戦後は平和運動に力を入れるとともに、遺作として『革命前夜』を書いたのである。ただ…

836話 神保町で火野葦平に出会う  その4

火野葦平の『アメリカ探検記』を読んでいて頭に浮かんでいたのは、「たしか、この時代に小田実もアメリカを旅していたはずだが・・・」ということで、小田の『何でも見てやろう』と比較すると、火野の旅行記はどの程度の物なのかという好奇心もあって読んで…

835話 神保町で火野葦平に出会う  その3

1958年のアメリカ政府の招待旅行は、長崎県議で漁業会社社長という人物とワシントンまで一緒に旅して、あとは自由という2カ月の旅だ。なぜ県議も招待されたのか、火野も「わからない」と書いている。それどころか、火野自身も、なぜアメリカ政府に招待された…

834話 神保町で火野葦平に出会う  その2

なぜか、アジアの棚に紛れ込んでいた本の背に、『アメリカ探検記』という文字が見えた。函入りの古そうな本だ。「アメリカ」にも「探検」にも興味はないし、著者名を確かめたら、余計に事情が呑み込めなかった。著者が火野葦平だったからだ。墓石が並ぶ墓地…

833話 神保町で火野葦平に出会う  その1

いつものように神田神保町の古書店巡りをしていると、今まで工事中だったビルのシートがはずされて、古書店の新しい看板が掲げられていた。澤口書店。同じ名の古書店がすぐ近くにもある。古書店のチェーン店らしい。新しい店は「東京古書店澤口書店」。すぐ…

832話 机の上の本の山 その5

『黄昏のトクガワ・ジャパン』(ヨーゼフ・クライナー編著、NHKブックス、1998)を、本の山から取り出した。 日本人がもっともよく知っているシーボルトは、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796〜1866)だが、在日英国公使館の通訳もやった長…

831話 机の上の本の山 その4

「困ったものだ」と自分でも思うのだが、新書では情報量が物足りないが、単行本の学術書だと「あー、めんどーくさい」と読まない。手にも取らない。そういう本のひとつが、机の上にあった。『<運ぶヒト>の人類学』(川田順造、岩波新書)の成立事情はわか…

830話 机の上の本の山 その3

アジアや旧ソビエト地域などで見かけるしゃがみ式便器は、日本のしゃがみ式と同じように床と同じ高さに設置されたものと、床から20〜30センチくらい高く設置してあるものがある。前者は日本人にも理解できるが、後者は「和洋折衷か?」などと書いている人が…