古本屋には「高価買取」という看板がつきものだが、本当に「高価」だったためしはない。私は高校時代から古本屋で本を売っているが、店のオヤジはいつだっ て、「いま、本が安くてねえ」だの、「チリ紙交換で、本が安く仕入れられるから……」などと言って、予想よりはるかに安い値段を付けられる。10年ほど前 だが、売れそうな本ばかり選んで段ボール箱2個に入れて、近所の古本屋に持って行ったら、総額がなんと1200円というので、「それなら、燃えるゴミの日 に出してやる!」と言って持ち帰り、半分は本当にゴミに出し、あとの半分は捨てきれずにまだ家にある。
先日、ある古本屋に行ったら、「文庫・単行本高価買取表」なるものが紙袋に入っていた。著者名と書名のリストだが、私が読んだことがある本は、みごとに 一冊もない。それどころか、名前も知らない書き手が何人かいる。アジアが関係する本は『マレー鉄道の謎』(有栖川有栖)くらいしかないが、著者名だけでも 書き出してみよう。
宮部みゆき、森博嗣、京極夏彦、東野圭吾、高村薫、竹山健治、法月綸太郎、山田正紀、浦賀和宏、殊能将之、舞城王太郎、高田嵩史、乙一、小野不由美、逢坂剛、真保裕一、大沢在昌、馳星周、浅田次郎、江國香織、桐野夏生、塩野七生、村上春樹、宮城谷昌光。
著者名を書き出すだけなら簡単だと思ったが、変換が面倒なものが多く、そういう変なペンネームを使うような人が書いた本が売れているということでもある。ミステリーのファンなら、どんな作品がリストにあるか簡単にわかるだろう。
高価買入とは逆に、古本屋が買いたがらない本のジャンルは、宗教団体の出版物や自費出版の句集や歌集、そして古いコンピューター関係書などだろう。時期はずれの経済書やビジネス書が古本屋で寂しく棚に納まっているが、あんな本を誰が買うのだろう。
「誰が買うんだろう」なんて言ってはいけないな。アジアやアフリカの本だって、興味のない人には「誰が買うんだ」という本だろうから。