番外 「何かお探しでしょうか?」


                        アジア文庫 店主

  「アジア雑語林」も、3月17日付けで100回を数えました。前川さんには、ほとんどボランティア状態で書いていただいていますが、当サイト内では、アク セス数の多い人気ページとなっています。改めてお礼申し上げます。ただ、時おり店主への課題が出るのが玉にキズ。で、今回も、その100回目のコラム、 「不審な客」で課された店主への課題にお応えする破目になった。
 長く本屋をやっていると、本当にいろいろな方にお会いする。お客さんに関しては800字どころか、8000字でも書き足りないが、お客様商売の身として は、お客さんのことをあれこれ書くのは、僭越だろうし、やはりためらわれる。ここでは、前川さんの疑問に絞ってお答えすることにします。

 本屋の立場から、「何かお探しでしょうか?」と声をかけたくなるのは、次の場合。
(1) 棚を見回して、本当に何かを探しているそぶりをみせている人。
(2) 本を見るでもなく、落ち着きがなく、うろうろとあっちこっち移動したり、見るからに行動がおかしい人。
(3) 万引きが目的らしき人。
(4) 怪しい人。(これは店員の主観がかなり入るかも)
 (1)は、目的買いの人が多い。知人や家族に頼まれて来ている人や、読書のレポートを課せられた学生など、どちらかというと、自分の関心分野とは別の本を探しに来ている人が多いようだ。(2)は、何のためにここ(本屋)に来てるんだろうと思える人、立ち読みするでもなく、本を選ぶでもなく、なんとなく不気味なのだ。(3)は説明の必要はないだろう。(4)は、万引き目的ではないようだが、何者だろうかと、服装や、雰囲気が常識的な範疇を超えて正体がつかめない人。私は(4)の人に声をかけることはないが、店(あるいは店員)によってはかけたくなるのかな?とは思う。
 前川さんの場合、(1)から(3)には明らかに当てはまらない。私は、髭面、長髪で、特に夏場は派手派手なシャツに、モンペにサンダル、という氏の風体が最大の要因だろうと思う。声をかけられるのも夏が多いのではないでしょうか?前川さん。多分、(4)ではなかろうかと私は推察します。前川さんが髪を短くカットして、髭を剃り、ネクタイにスーツとまではいかなくとも(想像しただけで吹きだしそうになりますが)、普通のシャツにジーパンで、靴を履いていれば、店員は気にもとめないでしょう。
 「せどり」と間違われたということは、考えられなくもない。棚の見方や、本の選び方は、近いものがあるかもしれない。でも、ちょっと違うような気もする。私も含めて、書店人は、何故かセンスのない地味な格好をしております。