332話 最近の若者は・・・・

「近頃の若者は・・・」という苦言は、古代から言われ続けているそうだが、ここ10年ほどの間に耳にした「最近の若者像」というのは、次のようなものらしい。以下の指摘が正しいかどうか、まったく知らない。伝説のようなものもあって、確認のしようもない事柄もあるが、耳や目にした事柄を、できるだけ思い出して書き出してみる。
●上司に「これから飲みに行こう」と誘われても、断る。
●同僚と飲みに行くより、学生時代の友人と飲むほうを好む。
●そもそも酒をあまり好まない。
●特に男は、旅行に興味がない。
●自動車に興味がない。
●オーディオ・マニアがいなくなった。
●オーディオに限らず、新製品の機械を熱心に買い求めることをしない。
●本をあまり読まない。
●登山やハイキングに興味を示さない。
●男は、服装にあまり興味がない。服に高いカネを使わない。
●音楽にあまり興味がない。
●友達つきあいが苦手。
●外で遊ぶより、室内で過ごす方が好き。
●野球などスポーツにあまり興味がない。
●麻雀やパチンコ、そして競輪競馬などバクチが好きではない。
●好きなことはやるが、いやなことはしない。
 多分、まだまだいくらでもあげることができるだろうが、若い男に関して言えば、ある傾向は読み取れる。それは、「非スポーツ新聞世界」である。スポーツ新聞が報じてきた「おっさん世界」に対して、「非」あるいは「反」の態度ではないだろうか。野球に居酒屋、競馬に演歌、ゴルフに自動車、麻雀に釣りに盛り場情報といった「おっさん世界」を拒否しているように思えるのである。若い女が、「おばさん世界」を拒否しているかどうかとなると、よくわからない。傾向としてはそうなのだろうが、それはなにもここ10年ほどの傾向というわけではないだろう。
 さて、じつはここからが本論で、上に書きだした項目の中で、「読書」「音楽」「旅行」を除けば、私の行動傾向であり性癖といってもいい。私は、酒にもバクチにもスポーツにも自動車にも、まったく興味はないし、知識もない。野球もサッカーも試合を見たことがないし、運転免許も持っていない。だから、スポーツ新聞には読む記事がまったくない。ラーメン屋などで、ヒマつぶしにテーブルの下のスポーツ新聞に手を伸ばすことはあるが、ページをめくるだけで終わる。男性雑誌にも、読みたい記事はない。
 そういうわけで、1970年代に、私はすでに21世紀の若者だったのである。では、私は特殊な若者だったのかと言えば、少数派ではあっても、「特別」というほどでもなかったような気がする。ある程度の期間、外国旅行を続けてきた若者には、私と同じような性癖や行動パターンがあるような気がする。
 旅行でなくてもいい。演劇バカとか音楽バカとか、あることに熱中する青少年時代を過ごしてきた人は、「みんな仲良く、和が大切なサラリーマン生活」という世界にはなじめないのだ。サラリーマンにだって、酒が嫌い、野球に興味がない、麻雀が嫌いな人がいて、しかし「お付き合いで、いたしかたなく」我慢している人が少なくないだろう。私のような生き方を選んだ者は、我慢などしなくていいから、「お付き合いが何より大事」とは考えていないだけのことだ。