テレビのとりこ
台湾でしたいことのひとつは、テレビを見ることだった。テレビを見ているのが楽しいから、日が暮れると早く宿に帰りたくなる。毎夜、遅くても8時か9時には宿に戻っているのは、テレビを見るためだ。特に見たい番組があるわけではない。そもそも番組表も見ていないから、どういう番組があるのかさえ知らない。したがって、ザッピングによって、おもしろそうな番組を探すのである。
おもしろいとわかっているのが、ニュースだ。ややこしい政治ニュースは私には理解できないが、興味深い話題もある。年末から新年にかけて、毎日のニュースに登場していたのが、2014年12月25日に着任した柯文哲(か・ぶんてつ、コ・ウェンチョー)台北市長だ。もう2月半ばだというのに、ニュース番組の扱いは、新任直後のようだった。正月はどこにお参りに行ったかとか、母親のインタビューや、ついには新市長特番まであって、祖父の代から今日までの歴史が紹介され、おかげでだいたいの生い立ちがわかった。台北市長選挙関連の情報は多いが、こういうのも参考になる。http://blogos.com/article/100493/
ある日のニュースで、タイの「白宮」で、中国人旅行者を「お断り」にしたいという話題を報じていた。「白宮」とは、チェンライ県のワット・ロンクンのことだろう。
http://find-travel.jp/article/2386
ここに来た中国人観光客のトイレの使い方があまりにひどいので、「中国人はお断りにしたい」と、この寺院の職員が語っている。添乗員らしき中国人は、「ごく一部の中国人の不作法で、中国人全体を見ないでほしい」と語っていたが・・・。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%B3
このニュースが終わって、ザッピングをしていたら、NHKの国際ニュースをやっていて、偶然にも、特集は「香港の中国人買い出し客に対する反感」だった。とてつもない金額のカネを使っているのに嫌われるという点で、ここ数年の中国人旅行者は、かつての日本人旅行者と同じだ。
春節が終わったあとの経済ニュースもおもしろかった。「かつては、春節は家庭で過ごすものでしたが・・・」と、今年の春節事情を追った。私は確認していないのだが、この時期の台湾人海外旅行者が減って、国内で過ごす人が多くなったという。デパートへの客も増えたが、物品販売の部門は売り上げ減だが、外食部門が大盛況だったという。また、行楽地への人出も多く、交通渋滞が起こったという。正月のニュースといえば。日本では帰省ラッシュ、道路の混雑状況の交通ニュースがつきものだが、台北周辺の道路はすいているが、大観光地である日月潭は大混雑だったらしい。
経済ニュースといえば、台北の空室率の話題も興味深かった。東京の空室率をはるかに抜いて、台北の空室率が高いという。昨今日本で話題になっている空家のことかと思ったが、どうやら高級マンションの空き室のことらしい。なぜ空き室が多いのか。「投資するなら、シンガポールの方が儲かるので、台湾の物件には手を出さない」という説明はわかったが、税金の問題は、詳しい説明をしていたがさっぱりわからなかった。私には不動産関連の知識も税金の知識もほとんどないので、日本語の説明でもすぐにはよくわからない内容だ。それでも、投資物件になかなか買い手がつかないという事情はわかった。
日本同様、通販番組も多い。日本では見る気がしないが、台湾の場合は比較文化の研究として興味がある。これは日本のテレビでは扱わないだろうなと思った商品は、数十万円もする硯だけを扱うコーナーがあった。硯販売専門チャンネルではなく、その日のその時の商品が硯だったということかもしれないが、日本円にして60万円だとか80万円だという硯をテレビの通販番組で買うのか。
旅行販売もあった。金沢から、立山、高山、草津を巡る旅で、旅行期間がよく分からないのだが、5万元と言うから、20万円ほどかかる。結構高いのは、宿や食事がいいからですよと旅行内容を紹介していた。
台湾のテレビを見ているからといって、私が中国語をよく理解できるというわけではない。テレビの情報は「聞いている」のではなく、「読んでいる」のだ。日本人にはありがたいことに、ニュースであれドラマであれ、字幕がつくことが多い。一瞬にして字幕を読み、「理解した気になる」というのが、台湾のテレビ鑑賞である。答え合わせはしていないから、私の誤解のままということも少なくないだろうが、上に書いた柯文哲台北市長の生い立ち番組を見た後、帰国してウィキペディアなどで確認したが、大体は理解できていたようだとわかった。
中国語の放送は、字幕を読んで理解しているだけだと思っていたのだが、どうもそうではないらしい。中国語放送は、字幕中心であっても、ある程度は耳も使い、その音によって、「この語は、こう発音するのか」とわかったり、字幕では省略した部分を聞いて発見したりという作業を一瞬でやっていたのだ。台湾語の映画などを放送していると、私の理解力は格段に落ちることに気がついて、少しは耳も使っていることがわかった。