1244話 プラハ 風がハープを奏でるように 53回

 乗り物の話 その7 料金 後編

 

 チェコの資料を数多く読み、ネット情報に目を通していると、チェコの変化が気になってくる。共産党政権時代から自由な時代になっていく過程で、何がどう変わったのか知りたいことはいくらであり、地下鉄駅の新旧名称を調べたのもその一環だった。

 トラムなど乗り物の料金を調べていくと、物価の変化がよくわかることに気がついたのだが、ややこしくて頭が痛くなる状況もわかってきた。それがどんなものか、以下の情報をご覧ください。Kは通貨単位コルナ。

■『地球の歩き方 チェコ/ポーランド ‘91~’92版』(1991年4月)には、こうある。

バス、地下鉄、トラム共通利用券が、1回1K。24時間乗り放題券は8K。

ちなみに、1991年1月に強制両替制度が廃止され、実勢レートでの両替が可能になった。1991年1月現在、1Kが約5円だから、2019年の現在と変わらない。外国人にとっては、とんでもなく安い。

 

プラハの滞在記『プラハの春は鯉の味』(北川幸子、日本貿易振興会、1997)

1996年春に公共交通の料金システムに変更があった。それまでの1回乗車ごとに6Kのキップを買うというシステムから、1回券で15分間有効、地下鉄はこのキップで4駅まで乗車可能となる。違法乗車の罰金は200K。著者が、道路工事でバスが渋滞に巻き込まれて、乗車時間が15分を過ぎたという理由で罰金を支払わされたという不満を書いている。96年ごろはまだ、共産党時代のお役所仕事の時代だったとよくわかる。

 

■『ワールドガイド チェコハンガリー 』(JTB、2001)

さらにややこしくなった。1回券8K。地下鉄は30分有効、4駅まで乗車可能。バスとトラムは乗り換え不可。乗り換え可能キップは12K。60分間有効。1日券70K、3日券200K。

 

■『地球の歩き方 チェコ ポーランド スロヴァキア ‘07~’08』(2007)

14Kのキップは、地下鉄は30分間有効、乗り換え可能だが、5駅先までの乗車。バスとトラムは20分間有効。乗り換え不可。ケーブルカー使用不可。

20Kのキップは、地下鉄、バス、トラムに適応し、75分間有効。夜間と土・日・祝日は90分間有効。1日券80K、3日券220K。

 

■『地球の歩き方 チェコ ポーランド スロヴァキア ‘11~’12』 (2011)

18K券。地下鉄は30分間有効、5駅先まで乗車可能。バスとトラムは20分間有効。乗り換え不可。夜間及びケーブルカーは使用不可。

26K券。地下鉄、バス、トラム、ケーブルカーに75分間有効。乗り換え自由。

 

■『地球の歩き方 チェコ ポーランド スロヴァキア 2018~19』(2018)

地球の歩き方』の表紙の年号表記がよく変わるのに気がついたが、それはさておき、最新事情を復習する。

 地下鉄、バス、トラム、ケーブルカーすべてに有効な乗車券は、30分間有効券が24K、90分間有効券が32K。いずれも乗り換え可能。1991年の料金1Kが2018年には32Kになっている。

 シンプルになったのはいいが、乗車時間制限をしている理由がわからない。1979年に香港に地下鉄が開通した時、乗車時間に制限があった。その理由は、多くの住民が涼みや昼寝にやって来ると想像されたからだ。プラハの地下鉄なら「避寒」の理由があるかもしれないが、ほかの寒冷地ではこういう制限があるとは思えない。プラハの地下鉄はソビエトの強い影響力のもとで建設されたが、モスクワの地下鉄にはこういう乗車時間制限はなさそうだ。制限の理由をご存知の方、ご教授ください。

 それはそうと、僭越ながら、プラハの公共交通機関の改革案を書いておくと、次のようになる。

・乗車時間制限撤廃。

・バスは均一料金にして、ワンマン化。

・地下鉄は延長工事が進み路線が長くなっているから料金均一制はやめて、距離に応じて変わる料金システムにして、キップを使う自動改札にしたほうがいい。札が使える自動販売機の導入か、関東のスイカのような先払い方式導入が便利だが、すべての駅に改札ゲートを設置しないといけないので、かなりの資金が必要だ。

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 1日券を買って、こういう街並みのなかを走るトラムで、ぼーっと車窓から外を眺めている時間も楽しい。

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 1950年代のファッション雑誌のイラスト風だが、描いたのはずっと後の時代だろう。

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 レールを削る工事車。このほか、新幹線のドクターイエロー(検査車)のような特殊車両も走っているが、突然現れて走り去るので、撮影するタイミングを逸した。
 

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  かつては、プラハでもトロリーバスが走っていたようだが、多分、今は廃止されたと思う。これは、チェコ南部のチェスケー・ブディエヨビィツェで見かけたトロリーバス。車体が新しいから、トラムからバスに代わってまだそれほど時間がたっていないのだろう。