1249話 プラハ 風がハープを奏でるように 58回

 チェコの食文化 その2 クネドリーキ

 

 何で読んだのか忘れてしまったが、国外で暮らすチェコ人が夢見る故国の食べ物はknedlikyクネドリーキだという。カタカナで「クネドリーキ」と検索しても、日本語の情報がいくらでも出てくるほど、パンやチェコに興味がある日本人の間ではかなり知られたパンらしい。そのひとつ、次のブログ「チェコの暮らしと手仕事」を読んだら、外国でこのパンを懐かしく思った有名チェコ人はドボルジャークだったとわかった。その真偽はともかく、そういう逸話を私も読んでいたらしい。

 https://mirabelka.exblog.jp/24182621/

 上記ブログでクネドリーキについて詳しく紹介されているから、私はごく簡単に書いておく。クネドリーキは蒸しパンのような外見で、多分、説明されないと固めの蒸しパンだろうと思うかもしれないが、ゆでたパンだ。ただし、最近は電子レンジで加熱する家庭もあるという。

 チェコに来たのだから、一度は食べてみようと思い食べてみたのだが、想像していたほどにはうまくない。味も香りもないのだ。何度も食べたいと思うパンではない。あるレストランの写真メニューを見たら、ワンプレート料理にはクネドリーキがついていたので、「ジャガイモに変えてほしい」と注文した。ところが、テーブルに届いたのはクネドリーキで、「おいおい、違うだろ。ジャガイモに変えてくれと言ったじゃないか」と文句をいうと、店主は平然と、「これ、ジャガイモです」と答えた。

 これは、半分言い逃れであり、半分真実だろう。現在は、クネドリーキは小麦粉を使ったものが標準だろうが、各家庭の台所事情や好みで混ぜ物が入るらしい。食べ残したパンを水でふやかして小麦粉と混ぜたり、イタリア料理のニョッキのように小麦粉にゆでたジャガイモを混ぜて作ることもあるようだ。私の想像なのだが、歴史的には「混ぜられるものは何でも混ぜて増量する」というパンだろうと思う。ジャムなどを入れた甘いものもある。ヨーロッパで、白い小麦粉が誰でもたっぷり使えるようになるのは、それほど昔のことではない。たんなる思いつきで言うが、昔は小麦粉がつなぎだったのだろうと想像している。

 このゆでたパンを、チェコの名物のように紹介している記事も多いが、前回紹介したロフリーク同様、近隣諸国に同じようなパンがある。ただ、ゆでたパンの仲間では、チェコクネドリーキがもっとも有名だろう。

 チェコの代表料理の1品と言えば、グラーシュにクネドリークを添えたものだろう。グラーシュというのは赤いシチュー状の料理で、トマト味のように見えるがパプリカを大量に投入したハンガリー起源の料理だ。こういう事情なので、「チェコ料理とは?」という話はしにくいので、「チェコの料理」を語りたいと思う。起源がどうであれ、チェコ人が日常的に食べている料理のことだが、私はプラハ以外の事情をほとんど知らないし、ホームステイもしたことがないので、「うちの味」も知らない。外食で得たわずかな知見で話をしている。

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 初めて食べたグラーシュとクネドリーキ。実は、1980年代に、日本で最初にできたハンガリーレストランでグラーシュを食べているが、味の記憶はなかった。クネドリーキは、この写真のように「焦げ目のないバゲット」のようでもあり、蒸しパンのようでもある。これと次の料理は、フードコートのもので、どちらも一皿500円ほど。

 

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 豚ヒザ肉のローストPečené vepřové kolenoというものを写真で見たが、大きな塊なので、とてもひとりでは食べられない。テレビ番組のように、残すことを前提として注文する気にはなれない。ところが、ある日、ショッピングセンターのフードコートで、一人前でも注文できることとわかり、やっと食べることができた。切り分けたので、カリカリの皮がないのが残念だが、うまい料理だった。詰め合わせは、クタクタに煮たキャベツ。2度目になるクネドリーキは、「もうこれが最後でいいや」と思った。ジャガイモにすればよかった。

 このヒザ肉のローストのレシピはこれ。ねっ、食いたくなるでしょ

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  それで、「クネドリーキをジャガイモに変えて」といって注文したのが、これ。写真ではゆでたジャガイモのようにも見えるが、これもクネドリーキ。たしかに、気泡が細かく、しっとりはしていたが、うまくはない。ここはちゃんとしたレストランだから、水を持ち込むのは遠慮した。料理と水で、1000円は越えた。

 それはそうと、食べ始めてから「あーあ、写真だ!」と気がつくのはいつものこと。食欲が第一、写真なんかどーでもいいという旅行者である。