1355話 角界の外国人労働者

 

 相撲そのものにはまったく興味がないのに、言いたいことがある。

 横綱白鵬の張り手やかち上げが「見苦しい」と、横綱審議委員会がたびたび指摘している。

https://www.sankei.com/sports/news/191125/spo1911250034-n1.html

 こうした指摘に対して、元大関魁皇浅香山が見事な反論をしている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32347440Y8A620C1000000/

 責められるべきは、強くならない若手であって、横綱ではないという反論だが、重要な論点が欠けている。

 横綱だから、横綱らしい品格を持てという指摘は何度も耳にした。しかし、それはごまかしだ。白鵬は、日本国籍を取っても外国人扱いだから、絶えず批判されるのだ。小錦以来、絶えず続いてきた外国人力士批判だ。

 2017年に、日本出身者としては19年ぶりに横綱になった稀勢の里に対しては、高田文夫はラジオ番組で「横綱はやっぱり日本人じゃなきゃだめだよな」と言ったが、同じように思った日本人は少なくないと思う。だから、横綱での成績、36勝36負97休でも、表立った大非難批判はほとんどなかったと思う。「一日も早くけがを治して、土俵に戻ってほしい」という意見が多かったように思う。「横綱の品格、潔く引退」などという人は、休場が長く続くまで出なかったような気がする。日本人の横綱は、双羽黒ほどひどくないと、批判にさらされない。ながらく日本人の横綱はいないから、力士全般の批判でも外国人に風当たりが強い。

 こういう相撲界を見ていると、外国人力士も日本で働く外国人労働者と同じ扱いなのだとつくづく思う。人手不足だから日本に連れてきて、用が終わればすぐ帰国せよ。親方は日本人に限る。そういう相撲界だ。

 相撲は日本人のものだ。日本人だけでやるというなら、それはそれでひとつの考えだ。外国人は入門させないという決まりがあってもいい。入門条件は「5代さかのぼって日本人であることが証明できる者に限る」とすれば、当然横綱大関も、力士はすべて日本人になる。そういう相撲界にして、神社で奉納相撲をやる伝統芸能にしたいなら、それはそれでいい。しかし現実は、興行利益のために外国人を利用して、強くなれば徹底的に批判するという日本人の態度に、品格はない。

 相撲ファンのじいさんは、つくづくバカが多いと思う。女は土俵に上がらせないという主張をするときに、「どうしても上がりたいなら、ふんどしをしめて来い」などといい、「どうだ、オレ、おもしろいこと言うだろ」と得意になっている発言をラジオでしばしば耳にしている。「女も力士にしろ」と言っているわけではなく、「表彰式に参加させろ」、「断髪式に参加させろ」と言っているだけなのだが、そういう理屈がまったく理解できないのが、相撲じいさんたちなのだ。