1803話 若者に好かれなくてもいい その3 

 

 タイでは、タバコの持ち込みは200本までは許されるが、それを超えるととんでもないことになるそうだ。その例のひとつがこれ電子タバコの持ち込みは禁止で、もちろん所持も禁止。違反した場合は、最高懲役10年。しかし、マリファナは所持も販売も自由。露店もある。マリファナが国内持ち込み禁止となっているのは、「国産品を愛用せよ」ということか? タイは、ますますわからない国になっている。もっとも、警察も軍も政治家も、麻薬で荒稼ぎしていた国で、「今は、軍はそういう商売はしていないようですよ」と事情通はいうが、個人的活動はわからない。マリファナ500㎏を輸出して逮捕された国会議員がいたが、裁判になったかどうかは知らない。

 それは、さておき。

 自慢話とねたみは紙一重だ。誰がどう受け取るかというだけの違いでしかない。例えば、ある人が、「フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートに行ったんだけどさあ・・・」と話し出しても、私はまるで興味のない場所だから、お付き合いで、せいぜい「楽しかった?」と聞くだけだが、「なにがフロリダだ。こっちは浦安だってなかなか行けないのに、自慢しやがって」と腹立たしく感じる人もいるだろう。

 「オレ、5年前に世界一周してさあ・・」と、自慢げに話している男がいたとする。その移動ルートを聞いて、「なんだ、アフリカに行かないで『世界一周』?」というくらいのイヤミを言いそうな私だが、「すごい、世界一周か! オレもいつかは・・・」と感動的なまなざしで見る人もいるだろう。

 「5年前、パリにいたときにね、ポーランドにいる友達が「遊びに来いよ」というから出かけると・・・」という話でも、「旅行人」愛読者たちなら、それを「自慢話」に感じる人は少ないだろうが、「ヘンっ、カッコつけやがって」とか「偉そうに」と感じる人もいるだろう。

 旅行以外でも同じで、住んでいる場所や部屋の広さや、持っているクルマや、学歴や親の職業とか、そういうことが「自慢話」に聞こえる人もいれば、なんとも思わない人もいて、時にはそういう話に感激したり、見下す態度をとる人もあるだろう。

 だから、高田純次の「自慢話をしない」というのは、実はたいした意味はない。旅行の話を、「自慢話」だと感じる人がいるから話さないと決めていても、ほかのことでねたまれることもある。だから、他人のねたみなんか気にしなければいい。好きなことを、話せばいい、書けばいい。高田純次だって、考えようによっては、その存在が「有名人」であり「高額所得者」という「歩く自慢話」なのだから。

 旅行に関して、自慢したがる人というのは確かにいる。その昔、旅行雑誌「オデッセイ」に載っていたジョークがある。アテネの安宿で、たまたま3人の日本人旅行者が出会った。ひとりが口を開く。「このギリシャで55カ国目になった。50を超えれば『大旅行者』と呼ばれてもいいでしょ」。別の旅行者が、「70カ国以上だろ。オレ、今72カ国目」。すると3人目の旅行者が、「世界の国って、180か190くらいらしいから、せめてその半分の90じゃないかな。おれ、90は超えたぜ」。3人とも、今までの訪問国の数をちゃんと数えていて、その数が多ければエライと考えているという皮肉だ。

 訪問国数自慢ではなく、訪問地自慢というのもある。ツアーに参加した人が、「あそこに行った、そこにも行ったと自慢ばかりしている人がいて、うんざりだった」と話していたのを覚えている。

 回数自慢というのもあるな。コロナ禍前なら、年に4回くらい韓国に行っているおばちゃんやお嬢ちゃんなどいくらでもいただろう。そのくらい行っていれば、合計何回行ったかなんて気にしなくなるはずだ。「韓国、行きます?」と聞かたら、「はい、よく行きますよ」と答えるだけだろう。

 「年に何回行くのか」という質問は、私も受けたことがある。かつて、「前川さんは、タイには年に何回くらい行くんですか?」と聞かれて、「まあ、1回ですね」と答えたら、「なーんだ。そんなものですか。毎月のように行っているだと思ってました」という反応だった。「秋に日本を出たら、翌年の春まで戻ってこないので、年に何回も行くことはないんです」と説明した。これを、自慢とかイヤミにとる人はいるだろうな。でも、事実を答えただけなのだ。