1898話 言葉は実におもしろい。地道に勉強する気はないけれど・・・ その9

 

数字の言語

 高野さんの解説では、リンガラ語の数字の言葉は、リンガラ語とフランス語を状況に応じて使い分けているという(P75)。その記述を読んで思い出したのが、フィリピンだ。タガログ語の数字はもちろんあるが、話し手の状況によって、スペイン語か英語で数字を表す。

 散歩の途中に立ち寄ったマニラの手工芸品店で、ちょっと気になる商品を見つけたので、値段を英語で聞いた。若い店員は値段がわからないようで、店の奥に大声で叫び、品物の説明をした。奥から「トレインタ」という声が聞こえた。スペイン語の”treinta”に聞こえたが、フィリピン化したスペイン語の”trenta”だったかもしれないが、「30」と言ったとわかる。奥の声を聞いた店員は、私に向かって「fifty」と言った。「今、奥で『30』って言ってたよね」と店員に言うと、「なあんだ、タガログがわかるのか」。正確には、タガログ語で30は、tatlumpu(タットロンプ)というのだが、高野さんがリンガラ語で例にしているように、「~枚」とか「~個」など助数詞がつくとタガログ語の数字を使うそうだ。タガログ語をちゃんと勉強したことがないので、受け売りである。

 日本語でも韓国語でも、固有の数字がある。日本語では「ひとつ」、「ふたつ」、あるいは「ひー、ふー・・・」という数え方だ。韓国語だと助数詞を使うとき、ハナ、トゥル、セッ、・・・という固有の数えかたがある。通常は、日本で「いち、にい、さん・・・」のように中国起源の数え方をするように、韓国でも「イル、イー、サン、・・・」となる。韓国語の数字を眺めたとき、「ああ、そうか、中国起源か」と気がついたのは、タイ語と似ているからだ。

 韓国語の数字

1、イル 2、イー 3、サム、4、サー、5、オー 6、ユッ 7、チル 8、パル 9、クー 10、シプ

 タイ語の数字

1、ヌン 2、ソーン 3、サーム 4、シー 5、ハー 6、ホック 7、チェット 8、ペート 9、カウ 10、シップ

 「数字が似ている」と初めて気がついたのは、タイから香港に来て、広東語の数字を覚えようとしたら、「似ている!」。例えば、7、チャッ 8、パッ 9、ガウ 10、サップだ。そして、韓国で数字を覚えようとしたら、「似ている!」。それで、「なんだ、元は中国語か」と気がついたというわけだ。「第1」、「第2」にあたるタイ語は、エーク、トゥーなどという。軍の階級の「一等・・」という名称や、「タイ随一の・・」というようなときに、エークを使う。インドで数字を覚えた人は、「エク、ドゥー、ティン・・・」を思い出すだろう。タイは、インドと中国の影響を強く受けていることがわかる。

 タガログ語の数字は、言語的に近いマレー語とよく似ているのだが、その話は長くなるので、省略する。

 フィリピンは元スペインの植民地だから、人名はもちろん、地名など、旅行者でも簡単に気がつくスペイン語、正確にはフィリピン化したスペイン語に出会うことが多い。私はタガログ語をまったく学んだことがないが、mesa(テーブル)やbanyo(トイレ。元のスペイン語ではbaño)、karne(肉、スペイン語ではcarne)など意味がすぐにわかる単語はいくらでもある。