1956話 大阪という異郷 上

 

 NHKの地方局が作った散歩番組を時々見る。ローカル番組を全国放送しているようだ。つい先日見たのは枚方編だ。これで「ひらかた」と読めるのは大阪人だが、子供時代に行ったことがあるから、私はまず耳で知りのちに文字を目で知った場所だ。枚方といえば菊人形というのが、中高年の関西人の常識である。

 全国放送のテレビで大阪といえば、たこ焼き&吉本&新世界の大阪だけだから、おもしろくない。大阪府全域で、おもしろい場所はいくらでもあると思うのだが、どうも日本人は大阪が嫌いなんじゃないかと思えてくる。私の調査ではそうなる。

 JTB出版から「ニッポンを解剖する!」というシリーズが出ている。以下、そのラインアップを紹介する。

『ニッポンを解剖する! 東京図鑑』 (2016.8)

『ニッポンを解剖する! 京都図鑑』 (2016.8)

『ニッポンを解剖する! 名古屋 東海図鑑』 (2016,9)

『ニッポンを解剖する! 沖縄図鑑』 (2016,12)

『ニッポンを解剖する! 金沢 能登図鑑』 (2018.2)

『ニッポンを解剖する! 北海道図鑑』 (2019,4)

 2019年以後出ていないということは、売れていないということだろう。『名古屋』を試し読みで紹介しているように、紙面をみれば、じつに見事な「前川好みの本」だ。だから、売れないのかもしれない。多くの旅行者が興味を持つのは、「おいしい店と楽しい買い物」だから、旅先の詳細情報は必要ないということだろう。

 上記ラインアップを見て気がついたはずだが、『大阪』がない。編集者が大阪嫌いということはないだろう。たとえ、本当に大阪嫌いであっても、売れると判断すれば出すのが商売の常識。だから、「大阪本は売れない」というのが、出版社の判断だ。

 コロナ禍で「地球の歩き方」は、新たな企画を考えなければいけなくなり、読む旅行本のシリーズを出し、そのあと国内編ガイドを出している。現在までのラインアップを書き出す。

J00 『日本』

J01 『東京23区』

J02 『東京 多摩地区』

J03 『京都』

J04 『沖縄 本島周辺の島々・八重山諸島宮古諸島

J05 『北海道』

J06 『?』

J07 『埼玉』

J08 『千葉』

J09 『札幌・小樽 札幌10区・北広島・登別・余市ニセコ積丹

J10 『愛知』

 さて、未完のJ06はどこだろう。『兵庫 神戸』か、『横浜 神奈川』か、『福岡』か、『金沢 北陸』か? 埼玉や千葉が出ていても大阪がない理由は、「売れない」からか? 

 大阪も嫌われたものだ。