1987話 橋を渡る その10

 

 私はどうやら、鉄骨むき出しの建造物が好きらしい。スカイツリーよりも東京タワーの方がはるかに好きだ。だからエッフェル塔に好感を持つのだが、なぜかパリにいたときエッフェル塔のことは頭にまったく浮かばなかったので、実物を見た記憶がない。

 話はそれるが、同じような体験がある。カイロにいたときだ。街を散歩していたら、丘があり、坂を上るとモスクがあるようだが、カイロを見渡すにはいい場所かと思って坂を上ると、たしかに見晴台のような場所で、カイロの街の周辺に三角の建造物が見えた。もしかして、あれがピラミッド? エジプトにピラミッドがあることは知っていたが、エジプトのどこにあるのか知らなかった。まさか、カイロ郊外にあるとは思わなかった。初めからピラミッドに興味がないと、そういうことになるのだ。

 ポルトに話を戻す。

 ポルト滞在中は曇天が続いていたが、ドン・ルイス一世橋は期待通りすばらしかった。エッフェル塔を設計したギュスターブ・エッフェルの弟子テオフィル・セイリグ(1843~1923)の設計。完成は1886年。全長400メートルほど。この時の旅は2002年で、ブログにほとんど何も書いてないし、写真はまったく撮っていない。ポルトの街が気に入って、2016年に再訪している。この時はブログに旅行記を書いたし、写真も撮った。この写真も2016年のもの。この橋の画像はネットにいくらでも出ているから、興味のある方はそちらをどうぞ。

 2度目のポルトで死にそうになった。危ないところだった。この橋に限らず、長大でなければ歩いて渡る。もちろん、2002年の旅でも何度も橋を歩いて渡った。2016年でも同じように橋を歩いていたら、後ろからトラムが迫っていた。ポカーンと歩いていたら、やられるところだった。2002年には、橋にトラムは走っていなかったのだ。橋だけでなく、との当時は、トラムの一斉点検だということで、街中もトラムが走っていなかった。そして、2005年以降に採用されたトラムは地下鉄車両のような最新式のもので、ガタゴト音を立てない。だから、車両がうしろから迫っていることに気がつかなかったのだ。

 ポルトは小さな街だから、ひと月滞在するには退屈だが、1週間か10日くらいなら充分楽しめる。毎日川沿いを散歩し、夜は日本の古典文学を読んでいるという日々は楽しそうだ。ポルトは今も大好きな街だが、ここも「大混雑観光地」の仲間に入って、どこに行っても人込みということになっているだろう。

 ちなみに、リスボンの4月25日橋は長さ2300メートルほどだが、歩くようにはできていない。私はバスで渡った。