『世界でいちばん旅が好きな会社がつくったひとり旅完全ガイド』に関しては、ちょっと触れたくらいで終わりにする予定だったが、旅のことなので、ついつい長くなった。
この本の第9項は、(ひとり旅は)「やっぱり、英語が話せないと難しいですか?」という設問に対して、「大丈夫。英語がまったく話せなくても、世界一周を実現した人だっています」と回答している。私の知る限り、この手の本はほとんど「英語なんかできなくたって、旅はできますよ。ぼくだって英語はできません」といった内容の文章を書いている。ただし、こういう文章を書いている人が、本当に中学1年生レベルの英語力しかないのか、あるいは受験英語の勉強に多大な費用と時間をかけた結果、見事大学に入学して、卒業した人なのかは考察しておく必要はある。「ぼくも英語ができません」という「ぼく」の英語力は、「通訳や翻訳者として飯が食えるような英語力はありません」という意味かもしれない。「英語はできません」という場合の「できない」のレベルが、人によって大きく違うのだ。
広い読者を得たい本は、「大丈夫、英語なんかできなくても世界を旅行できますよ」と書かざるを得ないのだろう。英語もほかの言語もできないということは、日本人の旅行者や在住者や、デジタル情報に頼る旅だということだ。
この本の著者たちは、それじゃまずいと考えているのだろう。中学英語の復習をしようと提案している。私がやった方法がこれだ。初めての旅で英語は少しはできたが、基礎となる文法がいい加減だということに気がつき、帰国後に本屋に行って、高校受験用の優しい英語のテキストを買った。旅行のために英語を勉強したのはそれだけだ。あとは、旅行でよく使う英単語を覚えていくことだ。
Transit(乗り継ぎ)、Transfer(乗り換え)、Stopover(途中降機)、Immigration(出入国管理)といった単語は、旅行しながら覚えた。英語に限らず、外国語がわからないという不安は確かにあるが、旅行テクニックがある程度身につけば、空港でまごつかずに乗り換えができるようにはなる。本当に外国語がしゃべれないと、日本人と同行するか、日本人と出会うまで無言の日々を過ごすことになる。
そういえば、その昔reconfirm(予約再確認)なんていうのがあって、航空会社の支店に電話をすればいいんだけど、電話の場所がわからないし、場所がわかってもその国の電話のかけ方がわからないし(電話の仕方が全世界共通だなんて思っちゃいけない)、わざわざ支店まで出かけて行ったことがあった。
また雑談に入るが、前回の橋の話の続きのようだが、バンコクのチャルン・サワット橋のたもとに電話ボックスがあった。端材で作った半畳ほどの木造小屋で、有人。窓口に電話が置いてあって、カネはその人に渡した。主に長距離電話用だけど、街に電話屋というのが様々な国にあったなあという話になると長くなるが、電話の英語というのも覚えておく必要があった。この公衆電話から航空会社とバス会社に電話したことがある。