2029話 学校とスポーツ

 

 日大アメフト部の問題がマスコミで取り上げれられても、学校と体育会運動部をテーマに語った例を見ていない。スポーツは、マスコミでは社内の運動部(あるいはスポーツ部)が担当するからスポーツ界に不利なことは報道しない。政治部が議員や政党と密着(一部では癒着)しているから、社会部が取り上げないと政治の暗部を報道しないのと同じだ。

 高校や大学が運動部に力とカネをそそぐ目的は、学校の宣伝活動であり、学生を集める広報活動であり、スポーツで優秀な成績を収めれば、学校のイメージが良くなるということを目的にしたものだ。だから、日本語がまったくできない外国人を連れてきて、留学生という名目でスポーツをやらせる。運動能力さえあれば、学習能力などどうでもいいのだ。日本人であれ外国人であれ、世界レベルの選手なら、学校に通う余裕はないし、外国でのトレーニングや国際大会出場に忙しく、そもそも日本にいることさえ少ない。世界を転戦していても卒業できるのは、学校が優秀な運動部員を宣伝要員と考えているからだ。授業に出るよりも、大会でいい成績を残してくれた方が、学校にとってありがたいのだ。

 大学で講師をやっていた時の体験を書く。

 私の授業は、出席はとらない、成績は学期末のレポートで判断するというものだ。履修者は最大で200人を超えて、レポートを提出しない学生は、ほんの数人だけだった。

大学のレポート受付窓口に提出されたレポートは、大学の職員の手で、学科別学年別に区分けされて、私の自宅に郵送されてくる。私の授業は、どの学部の学生でも希望すれば受講できるから、学部学科別の区分けが必要なのだ。成績は特別に優秀のSからABCとあって、D判定は不合格というのが大学の規定で、「Aを何パーセントにしなさい」といった規定はない。

 成績判断基準は、レポートを提出した時点でC判定にして、内容によって加点あるいは減点していくというものだ。減点は、例えばコピペ。私のレポートテーマは完全にコピペできつようなものではないが、一部はネットに情報がある。学生はレポートのテーマで検索するから、だいたい同じ情報を手に入れる。それを、あたかも自分の考えかのように書いてくる学生が何人かいるから、コピペはすぐにわかる。文体が急に変わったり、表現がちぐはくだと、雑誌記事の切り張りに見えるからすぐわかる。知り合いの教授の話だと、その教授が書いた論文をコピペした学生がいたという。教師の名前など気にかけていないのだ。

 自宅に届いたレポートを読んでいると、「なんだ、これ!」というできそこないのものも当然あるが、それが連続することがある。これも、次のも、ひどい。なんだ、これ。D、D、D、D、Dと不合格が続く。で、学科名を見ると、スポーツ推薦の学科だとわかる。そのくらい、大きく差をつけて、成績が劣るのだ。個人ではなく、学科全体に成績がひどく落ちる。

 まず、日本語の文章がまともに書けない。レポートの要綱を書き出すときに、「1字下げ、改行、句読点などに注意を払うように」と書き添えてあるが、無視される。考えてもご覧なさい、1行40字で35行改行なし。さすがに句点「。」はあるが、読点「、」なしで、3行か4行続くから、紙面が真っ黒だ。内容は、こんな具合だ。

 「ボクが高2のとき2年生の夏休みにブラジルにサッカー留学をしたときブラジルのサッカー留学は高2の僕にとってブラジルという知らない土地に留学しでサッカーの勉強を・・・・」といった文章が1400字続くのだから、不合格のD判定にしたのだが、この学生は大学に「成績判定不服申し立て」をしてきた。そういう制度があるから、それ自体まったく問題ないが、そこには、「毎回の授業に出席していて、レポートも提出したのにD判定とは納得いかない」というものだった。教師の回答・反論の欄があるから、こう書いた。

 「出席を取っていないのだから、毎回授業に出ても成績とは関係ないという話は授業でしている。出席していれば知っているはず。レポートは日本語の文章をちゃんと書くように授業でも指導した。こういう文章がまともな日本語の文章とは思えない」として、そのレポートの数行をコピーして大学に送った。