379話 1月4日の海外旅行広告から

 自宅に配達された1月4日の朝日新聞には、4ページにわたってH.I.S.の全ぺージ広告が出ている。多分、朝日だけではなく他紙にも載っていることだろう。普段はツアー広告などまったく目を止めないのだが、きょうの「目的別に選べる旅」とタイトルされた1ページ広告には、ちょっと注目し、ツアー内容を読んでしまった。
◆2012年ロンドンオリンピック観戦ツアー 陸上決勝・男子サッカー決勝・男子バスケット決勝観戦チケット付 7日間 168万円
 この広告に目が止まったのは、「1人部屋追加代金+30万円」という説明書きだ。ロンドン5泊を一人で過ごしたければ、30万円追加だ。そもそも、168万円という旅行代金にはすでに1室2人使用時の1人分の部屋代が含まれているのだから、それに1泊6万円の追加料金というのは、「オリンピックに便乗した人の足元を見た金額」であることは明らかだ。ヨーロッパのホテルにはツインベッドの部屋は少なくダブルベッドの部屋が多いから、友達どうし男ふたりのオリンピック観戦を考えていたら、つらい夜を迎えることになるかもしれない。そうならないように自分の部屋を求めたら、30万円の追加か。通常ならホテルを移った方が安いのだが、オリンピック開催中では、そうもいくまい。
ブータン王国2大ハイライト周遊 6日間
 出発日によって、22万8000円と26万8000円の2コースがあるが、「先着10名様」という早い者勝ちツアーが、旅行者の受け入れ数を制限しているブータン旅行の特徴。昨今のブータンブームのせいで、即時完売だろう。
◆プチ世界一周航空券 
コース1 成田―ロサンゼルス―ロンドン―イスタンブール―成田 12万円(+サーチャージ47000円)
コース2 成田―ロンドン―パリ―ダブリン―ニューヨーク―成田 15万円(+サーチャージ55000円)
 この手の広告で一番イライラするのは、航空券の有効期限が書いてないことで、1年間使えるのか、数週間で旅を終えないといけないのかがわからない。買う気がないので、もちろん問い合わせたりはしないのだが。ロンドン往復におまけでニューヨークかイスタンブールがついてくると思えば、安いのか?
 じつは、いままで書いてきた話は、次の話の枕みたいなもので、私には次の広告が印象的で、コラム心に火がついたのだ。
◆マニラ発→成田行 呼び寄せ航空券 
往復 2.9万円 片道1.9万円(サーチャージ目安 往復12000円 片道6000円)
 私がなぜ注目したかといえば、もうおわかりでしょう。なぜ、フィリピン発の呼び寄せ航空券なのかということだ。呼び寄せ航空券とは、国際会議がわかりやすい例だが、日本で開催される会議に出席する外国人に、その人が暮らしている国から日本への航空券を日本から送るというような航空券のことで、支払いは日本で済ませる。あるいは、ハワイで大変お世話になった家族がいるので、日本にご招待したいと思い、ホノルル―成田の航空券を送るとすると、それも呼び寄せ航空券だ。だから、日本を中心に考えても、世界の多くの国と日本を結ぶ呼び寄せ航空券があるというのに、新春の広告に、なぜフィリピン便だけ登場したのか、それが謎だ。
 日本在住フィリピン人が、フィリピン在住フィリピン人を日本に呼ぶという可能性はないではないが、あってもごく少数だろうから、これはやはり日本に住んでいる日本人が、フィリピンにいるフィリピン人を日本に呼ぶ航空券だろう。しかし、困窮しているフィリピン在住の日本人も多数いるという噂も耳にしているから、生活破たんしたフーテンの兄貴のために、日本に住むできのいい弟が航空券を送るというストーリーも浮かぶ。
 というわけで、ちょっと想像力がある小説家やライターなら、『マニラ発 呼び寄せ航空券』という短編集やノンフィクションがすぐ書けそうだが、お決まりのフィリピン物の匂いがして、あまりおもしろくなさそうだ。それにしても、なぜマニラ? どなたか事情通の方がいらっしゃったら、裏事情をご一報ください。想像だけなら私にもできるが、真実をご存じの方の情報をぜひともいただきたい。