506話 日々雑感 その1

■料理人や料理評論家や、考える力のないグルメリポーターといった人たちが良く使う「素材の持ち味を大切にして・・・」という言い回しが気に食わない。「素材の風味を生かすために、極力、熱を加えない」とか「余分な調味料は素材の香り奪うので、塩以外使わない」などという言葉を聞くと、「それなら、生のまま、味付けもするな! それが最高だろ!」と言いたくなる。
 じつは、そういう料理を食べたことがある。アメリカのレストランで、メニューを見ていたらサラダを食べたくなった。サラダは2種、「Fresh」と「Boiled」があるだけなので、もちろん生がいい。ゆでてくたくたになった野菜なんか食べたくない。注文した生サラダがテーブルに届いて、「ああ! おお!」と声を出したくなった。生のニンジンやカリフラワーやキュウリなどの大乱切り。大きくバサバサと切っただけの野菜が、皿にゴロリところがっている。それぞれが、ゴルフボールくらいの大きさだ。そういう野菜を、テーブルの塩で食べる。菜食主義者用の特別レストランとか、野趣を売る変わり種レストランでもない。ましてや動物園でもない。普通の安食堂だ。これ以上「素材の味と風味を大事にした店」はないのだが、ちっともうまくない。
キヤノンエコロジーインダストリー株式会社という会社がある。テレビのコマーシャルで知った。
http://www.canon-ecology.co.jp/office/mission.html
プリンターのインクを回収して、粉砕し、別の製品を作るのが「エコ」なのだと説明しているが、それがインチキだということは、プリンターを使ったことがある人はみんな気がついている。キヤノン(キャノンではなく、キヤノンと表記するのが正しい。念のため)が空のインク容器を回収しているのは、他の業者に再生されたくないからだろう。再生阻止のための回収だろう。
もしキヤノンが本当に「エコ」を考えるなら、インクを1種にすればいい。市販のDVDや乾電池のように、世界統一規格のようにして、どのプリンターにも対応できるようにするなら、無駄がなくなり、本当の「エコ」だと認めてもいい。世界統一が無理なら、少なくとも、キヤノンで黒とカラーの2種にすればいい。
これは私の実体験だ。キヤノンのプリンターが故障したことがあった。修理するより新しく買った方が安いので、買った。すると、いままでのプリンター用に買い置きしていたインクもすべてゴミになってしまった。プリンターも修理しないから、ゴミになった。そういうシステムを作り上げたキヤノン(ほかのプリンターメーカーも同じだが)が、しらっとした顔で「エコロジーを大切にします」なんて言うんじゃないよ。
 この会社のことだけでなく、「エコツアー」とか「地球にやさしい」とかいうセリフを聞くと、眉にツバをつけたくなるのだ。
 追記 上の文章を書いてから、ある家電量販店のインク売り場をのぞいたら、今私が使っているプリンターの互換インク(純正ではない、他社の製品)を売り始めたことを知った。いままで、売ってなかったのだ。ただし、あまり安くない。そこで、私は一番安い詰め替えインクを使っているが、基本的になるべくプリントしないようにしているのだが、長文をモニターで読むのはつらい。
ボタン電池の種類が多すぎるとは思いませんか。規格を絞ってくれればありがたいのだが。通常、単1から4までの4種類が揃っている円筒形乾電池と同じようにしてくれればありがたい。電池に限らず、規格統一は重要だが、メーカーのエゴでなかなかうまくいかない。
ドンキホーテの時計売り場のポップ。「電池交換よりも安い!!」。腕時計の電池交換の相場は1000円。ここの時計は980円。
■「私はインタビューする者として、まことに無能でございます」と天下に公言する質問がある。それは、「あなたにとって、○○とは何ですか?」というものだ。「あなたにとって、野球とは?」とか、「あなたにとって映画とは」といったパターンの質問だ。ずっと前から、こんなアホな質問を考えたのは誰だったのか気になって調べているのだが、いまだわからない。「寺山修司が言いだしたと、筒井康隆が書いていた」というかすかな記憶があり、その事実を確認したくて、折に触れて筒井のエッセイを調べているのだが、その部分の文章が見つからない。これまたかすかな記憶で、「生き様」なんていう言葉も嫌だなどと、筒井が書いていたような気もするのだが、これも霞の彼方で確認が取れない。筒井の文章がすべてデジタル化していれば、こういう検索など簡単なのだろうが、今はまだそういう楽もできない。
■NHK総合、月曜夜の「サラメシ」は、日本の昼飯を取り上げた名作。さすが、テレビマンユニオンの製作。テレビには名店、絶品を取り上げ、うるさい芸能人が登場するタイアップ番組が多いが、これは違う。放送が始まった数年前から見ている。月曜のテレビといえば、テレビ東京の「YOUは何しに日本へ」は、深夜枠からゴールデンに移行し、放送時間が47分から87分に延長されて、魅力が半減した。深夜からゴールデンに移行した番組のほとんどは、討ち死にしている。
■街を歩いていたら、「天丼てんや」にそばやうどんもあることを発見。その隣の吉野家にはうな丼があり、その近くの「東京チカラめし」には四川麻婆&カレーなどの新メニュー看板が掲げてある。「これ一本で勝負!」といういさぎよい商売ができなくなっている日本に、いささかうんざりしている。