1459話『食べ歩くインド』読書ノート 第7回

 

 

P43ローカライズ・・「欧米風ファストフードもインド人の口に合うようにローカライズされ、愛食されている」。

 外国の食べ物を自分のものにするというなら、日本にはラーメンやカレーやトンカツなどその例はいくらでもある。いつもなら特に気にならない記述なのだが、音楽の話から、この部分が印象に残った。『食べ歩くインド』の読書BGMとして、いつものようにユーチューブで音楽遊びをやった。検索欄に国名や民族名を入れ、”music”と書くと、その地の音楽が流れてくる。その日は久しぶりにインドネシア音楽を探していたら(なぜか、インド音楽を聴く気分ではなかった)、とんでもない宝に当たった。まったく知らない歌手だ。Mutik Nidaという若い歌手だ。声が良く、節回しがいい。自らたたく太鼓がいい。インドネシア語の解説には両面太鼓のクンダンkendangの名手とあるが、クンダンを改造して、インドのタブラのようにして、たたき方もタブラに近い。気にいった音楽なので、すぐさま友人で音楽評論家の松村洋さんに情報を送った。しばらくして返信があった。うれしいことに松村さんにも好評だった。太鼓に関するコメントもあった。「世界では、外国から楽器が入って来ると、自分たちが気に入ったように改造するのはよくあることですが、日本人はそういうのは苦手で、真面目に正しく演奏したがるんですよね」。

 バイオリンがインド化した例が、このCarnatic Violin。Carnaticとは、インド南部の「カルナータカ州の」という意味。バイオリンはピアノと違って、好きな音程を自由に選ぶことができるので、インド人の好みに合ったようで、18世紀からこういう演奏をしてきたらしい。

P63バナーラスの食堂・・『地球の歩き方 ネパール・インド』の1982~83年版では、バナーラスのMongaという中国料理店が紹介されているという。それ以前の食堂事情を手元の資料で調べてみたくなった。

 『アジアを歩く』(深井聰男、山と渓谷社、1978)には、中国料理店が2軒あるとだけ書いてある。同じ著者の『インドを歩く』(YOU出版局、1979)には、Kwalityという高級西洋料理店と、Win Faという中国料理店の2軒が紹介されている。旅行雑誌「オデッセイ」のバックナンバーなどを取り出せば、まだ情報が集まるだろうが、面倒だからやめる。保管場所はわかっているが、容易に取り出せる場所にはないからだ。

P75ヤシ酒・・私は酒を飲まないが、食文化研究のために、1度はヤシ酒の味を確認したかったのだが、なかなかチャンスがなかった。タイでは、ヤシ酒をあまり飲まないからだ。フィリピンで見つけたが、「これ、売れ残りで、もう酸っぱくなっちゃったよ」。マレーシアでは、裏町でヤシ酒バーを見かけたが、荒んだ雰囲気で下戸には近寄りがたかった。初めてヤシ酒を飲んだのは、グアムだった。島民からの聞き取りで、ヤシ酒がスーパーマーケットでも売っていることを知り、買いに行った。味見をするだけだから、コップ半分もあればいいのだが、売っていたのは1ガロン(3.8リットル)入りのポリタンク入りだった。多すぎるが、高くはなかった。

 ホテルに戻って、飲んでみた。ひどく甘い。カルピスの原液100ccに炭酸水30ccと梅酒少々を加えたような感じで、アルコール濃度はビールよりもかなり低い。酒に弱い私でも、酔う前に甘さで気分が悪くなりそうだった。この樹液を煮詰めればヤシ砂糖になるのだから、ヤシ酒は手軽に味わえる甘味飲料でもあることがわかった。