マーガリン
これから8回の予定で、料理の油の話をしてみようと思う。そのきっかけは、ユーチューブの料理動画だ。
料理動画をよく見ている。それは、「おいしい天ぷらの揚げ方とか、「簡単 イタリア料理」といった実用情報ではなく、外国の食堂や屋台の料理風景をただ撮影しただけのものが多い。動画の中には、食材や調味料などにきちんと字幕を付けているものも少数だがある。タイ料理の動画では、ImportFoodがいい。インド料理の動画も多く見ているが、楽しいのはVillage Cooking Channelだ。
詳しい解説を加えながら、調味料などの説明をちゃんとしている。料理の先生が工夫した料理法ではなく、現実の屋台や食堂でや野外での料理だから、ノンフィクションでありリアリティーがあるのだ。いわゆるユーチューバーが料理撮影したもののなかにも、料理がわかっていて解説しながら撮影しているものもあるが、少なくとも日本人が撮影したものでは、詳しい解説を加えたものを見ていない。ただ撮影したというだけのものだ。詳しい日本語解説付き動画があれば、どこの料理でもいいから教えてください。
印刷物では、外国料理を紹介した本が多いが、紹介者の意向が働いているから、あまり資料にならない。「意向」というのは、日本では手に入らない食材や香辛料や道具の代用を考えたり、使う香辛料や油の量を減らして、日本人の口に合うようにアレンジしてあるといったことだ。読者(あるいはユーチューバー視聴者)が知りたいのは、その料理を日本でどう再現するかということなのだが、私が知りたいのはその料理が食べられている地域の食文化なのである。どういう調理道具があるのか、食材をどうさばくかといたことすべてに興味がある。
そういう話をいままでに少ししたことがあるが、今回は料理の油に限って書いていこうと思う。
タイやインドネシアやインドの食堂や屋台の料理風景を見ていて気になることがいくつもあるが、そのひとつがマーガリンだ。
インドではギー(バターの上澄み液)を使うし、チーズも使うから、バターを使うことは納得できる。
これはバターを使う例。
動画をていねいに見ると、マーガリンを使う例もある。動画に説明はないから、私がギーをバターやマーガリンと見間違えたのかもしれないが、ギーは高価な油だから、その辺の食堂や屋台では使わないと思うから、袋に入った黄色い物体はマーガリンだろうと思う。固形のものは、はたしてバターかといったことを、インドに疎い私が考えても話が進まないので、インドは除外して考える。
こういう話を書いていて思い出したのは、ケニアだ。ナイロビの安宿でだらだらと過ごしていたときのことだ。食文化の興味も兼ねて、宿の従業員やその友達が自炊している場に加えてもらったことがある。街での普通の1食分のカネを渡して、料理の準備から食後の後かたずけまで、雑談をしながら料理風景を眺めた。タマネギやキャベツを炒めるときに使う油は、缶入りのマーガリンだった。ヤシ油とかコーン油といった液体油ではなかった。肉を使わない料理なら、マーガリンを使った方がうまく感じるということなのだろう。街の食堂でも、フライパンで焼くような料理だと、マーガリンを使っていた。
東南アジアの話に戻る。タイとインドネシアの例はこれ。マーガリンを使う現場が目視できる。
タイ料理とマーガリンの18分45秒あたりに、黄色い塊を鍋に入れる。
インドネシア料理とマーガリンの10秒あたりから。
ベトナムの例も見つけたから、追加しておく。冒頭からマーガリンが登場する。動画 タイトルにも「Margarine!」となっている。ベトナム人が、マーガリンかという驚きである。
普段バターを使わない東南アジアの食文化で、マーガリンを使う理由がわからな。「風味が増す」とか「リッチな香りがする」といった理由なのだろうと想像できるが、真実は知らない。