584話 ショルダーバッグが欲しい

 
 今使っているバッグはいくつもあるが、ほとんどはトートバッグで、どれも合格点は出しているものの、満足しているわけではない。私の欲求に合致した、いいショルダーバッグが見つかるまでの「つなぎ」として、次点のバッグをバッグを買ったにすぎない。
トートバッグの不便なところは、肩にかけたまま中の物を取り出すことができないことだ。だから、いったん肩からはずして、左手でバッグを持ち、右手をバッグに突っ込んで探し物をしないといけない。旅行中など、地図やノートや財布などを取り出すことが多いので、まことに不便だ。だから、肩にかけたままで、バッグから物を取り出しやすいショルダーバッグが欲しいのだ。
 理想的なショルダーバッグは、次の3点の条件を満たしていないといけない。
、機能的。使いやすい。ある程度の数のポケットが欲しい。A4版の雑誌が入る大きさと本が数冊入る厚さ。
、本を数冊入れても耐えられる丈夫さで、しかも軽い。以前にこの雑語林でも書いたことがあるのだが、人工皮革のショルダーバッグを買ったら、数冊の本を入れただけで、バッグと肩ベルトの接合部分に亀裂が入った。本革は高く重いので、理想の素材は、布か合成繊維だ。本革のバッグは好きで、すでに数個のバッグを持っているのだが、熱帯多雨地域では、革バッグはいけない。雨と汗で、革がすぐにダメになる。丈夫さに注目して、帆布で作ったバッグを求めて京都へ、そして台南でも専門店に行ってみた。たしかに丈夫なのだろうが機能的とは言えそうになく、しかもとんでもなく高額だった。私の価値基準では、買う必要はないと判断した。コストパフォーマンスがかなり低いのだ。
、安い。あるデパートに行ったとき、バッグ売り場が目に入り、なかなかに良さそうなバッグが見つかり、近づいて値札を見た。高いことは想像していたが、「127,600円」ではとうてい買えない。ハンティングワールドは、デザイン的にそれほど悪くはないが、安い中古車が買えるほどの価格だから私にはとうてい買えないのだが、買えるカネがあっても有名ブランド品を持ち歩くのは恥ずかしい。
この、「ショルダーバッグ3条件」を念頭に、カバン屋や通販サイトでチェックを繰り返すこと数年を経ても、条件に合致するバッグは、やはりサラリーマンバッグしかないようだ。ノートパソコンを入れるようなショルダーなので丈夫で、徹底して機能的にできている。しかも、驚くほど安い。
こういうバッグだ。
http://www.amazon.co.jp/UNITED-CLASSY-%E3%83%93%E3%82%B8%E3%83%8D%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%B0-%E8%BB%BD%E9%87%8F2Way-A4%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%BA/dp/B0098SEH5O/ref=pd_sim_sbs_shoes_4?ie=UTF8&refRID=0MCVPJDFQTEFWAECEFVH
この手のバッグを、じつはふたつ持っている。マレーシアで行われた食文化シンポジウムに参加する時に、上記3条件でショルダーバッグを探したのだが、結局、あの黒いサラリーマンバッグを買った。外国での激しい使用にも耐えられる頑丈さがあり、かつ機能的で、しかも1050円という価格で買えるバッグなど、ほかには見つからない。サラリーマンのようで嫌だったのだが、仕方なく、買った。使い勝手は誠にいいのだが、不満もあった。ショルダーバックの条件にはもうひとつ、
、好みのデザイン、というのがあるのだが、この最後の1点を求めると、ほかの3条件があやしくなってしまうのだ。そこで、4点目の要望には目をつむり、黒いサラリーマンバッグを買ったのである。
 そのサラリーマンバッグを肩に、ペナンで開催されたシンポジウムの会場に行ったら、受付で同じような黒いバッグを渡された。シンポジウム関連の資料や過去の報告書などを入れる袋として、私が日本から持っていったようなしっかりしたバッグを、シンポジウム主催者は用意していたのだ。そういうわけで、シンポジウムのあとは、サラリーマンバッグをふたつ持って旅することになってしまった。
 その後もずっといいショルダーバッグを探し続け、昨年の台湾に行く直前にも探したのだが、結局、理想に近いバッグが見つからず、しかたなくまたサラリーマンバッグで出かけた。確かに、使い勝手はいいのだが、いつまでたっても愛着がわかない。
 通販サイトを見れば、「ちょっといい」と思えるバッグはあるが、素材の手触りなど、実際に手にしないで買う勇気がわいてこない。しかも、送料の問題もある。アマゾンの場合、本やCDは送料が固定だから計算しやすいが、バッグは売り主によってかなり変わる。3980円のバッグの送料が1780円というのは納得できない。「それなら、店で探すさ」というわけで、今もってなかなか買えないのである。