例によって、知り合いの知り合いの知り合いという極細の糸をたどって、ニューヨーク市立大学の心理学教授と知り合った。彼は、もともとは放送局の機械技術者だったが、バングラデシュで技術教育をしていたことがある。そのとき、異文化と心理といったテーマに興味を持ち、帰国後に大学院で心理学の勉強にはげみ、教授になったという人物だ。「ユニークな経歴の友達がいるから」と紹介されて会った。私よりも20歳くらいは上だったが、深夜にビレッジの倉庫で開催されたコンサートに連れて行ってくれたりと、いろいろお世話になったのだが、今、彼の名を思い出せない。40年以上前のことだから、許してもらおう。
その教授が、「明日の授業、見たけりゃ来てもいいよ」というので指定された場所に行ったのだが、そこは大学の構内ではなかった。その場所や授業内容の説明をされたのかどうかの記憶もないので、ネットの力を借りで過去を調べてみる。私が訪れたのはニューヨーク市立大学ブロンクス・コミュニティー・カレッジだったかもしれない。というのも、授業の後、教授といっしょにブロンクスにある学生のアパートに歩いて行ったのを覚えているからだ。「昼飯を買っていこう」といって、かなりの量のサンドイッチを買った。学生の家族の分だとあとでわかった。
学生の母と5人くらいの兄弟姉妹か親戚かわからない子供たちとの昼食後、大学生とふたりでちょっと話をした。彼は静かに話しながら、プレイヤーに乗せていたレコードに針を下した。声を聞けば、すぐにわかる。スティービー・ワンダーの” The Secret Life of Plants"(1979)は、そのなかの何曲かは日本で聞いたことがある。日本語のコーラスによる”Ai No, Sono”という曲があるから、日本のラジオでも放送したのかもしれない。つい先日のラジオで、このコーラスを担当した在米日本人児童のなかに西田ひかるがいたと、その本人が話していた。
教授の授業を受けていた大学生の自己紹介。元売人で、足を洗って、市の更生プログラムで大学に通っているといった。自分の更生だけでなく、問題のある若者たちの支援活動を仕事にしている。
2枚組のLPの1枚目が終わると、ジャケットにしまい、別のレコードを取り出した。ジャケットが見えなかったが、曲はすぐにわかった。コルトレーンの”My Favorite Things”。「サウンド・オブ・ミュージック」の中の曲というよりも、1993年から始まったJR東海のCM「そうだ京都、行こう」で流れていた曲ということで、ジャズに興味のない日本人にもよく知られることになった曲だ。
昼食と雑談を終えて部屋を出ると、廊下に大勢人がいた。エレベーターが故障したので、階段が大混雑だ。我々がいるのは15階だったかもっと高かったかだったので、暗い階段を下りて行った。20階ほどのアパートとはいえ、ブロンクスのほかのアパート同様、かなりくたびれている。
ニューヨークのジャズクラブでビル・エバンスを聞いたという話は何度かした。このクラブではフレディー・ハバードも聞いているような気がするが、当時の私には充分に受けとめられる知識がなかったので、ほとんど覚えていない。猫に小判、豚に真珠であった。でも、ニューヨークの音楽生活は実に楽しかった。
たった今、宿の近所でコンサートに行ったのを思い出した。散歩をしていたら、「用があって行けなくなったんだ。切符を買ってくれないか」と若い男が話しかけてきた。そこはカーネギーホールの前で、間もなく始まるラフル・タウナーのコンサート入場券だった。12.5ドルを8ドルくらいで買ったという記憶がある。
今、あのころと同じようなニューヨークで音楽ライブやステージ三昧を楽しんだら・・・、とまた計算したくなる。宿&メシも合わせて1日300ドルくらいはかかるのかなあ。ひと月で、約1万ドル、130万円か。安くやっても、100万円だ。あ~あ。
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今朝は、「イオンカードを再登録してほしい」というメールが来たが、イオンカードなんて見たこともないんだよ。みなさま、くれぐれもご注意を。