小社からの案内で
出版社に愛読者カードを送ると、「新刊の案内」といったダイレクトメールが届くことがあるが、そういう案内で購入を決めたことはない。私にDMを送るのは無駄である。
案内というのとちょっと違うが、文庫版雑誌「IN POCKET」(講談社)にその月に発売される各社の文庫リストが載っているのはありがたい。できれ ば、これに新書リストも載っているとありがたい。現在のように数多くの新書が出版されるようになると、書店に並んでいる期間も短く、知らないうちに書店か ら消えていき、間もなく品切れ絶版になる時代だ。新書に限った話ではないが、本が雑誌のようにすぐ消えてしまう昨今だから、ひと目で全貌がわかるリストが ぜひ欲しいのである。
文庫の雑誌があるのだから、隔月刊でもいいから新書の雑誌もあっていい。新書を出している出版社からでは自社本ばかり優遇することになるので、できれば第三社から出してほしい。
取次の資料にはすべての新刊情報が載っているのだろうが、そういう資料を入手してチェックするほど必要というわけではない。インターネット上にもそういう資料があるのかもしれないが、まだ確認できない。
書店に置いてある「これから出る本」が私の要望にいちばん近いが、それでもすべての新書を網羅しているわけではない。
そ の 他
各社に寄せられた愛読者カードのアンケートでは、もしかすると、今はこの「その他」がかなり多いのかもしれない。インターネットが普及したからだ。新刊 書に関して言えば、私はネット情報をあまり使わない。さまざまなサイトで紹介される「売れ行き良好書」と私の趣味が合わないからだ。ただし、検索目的では よく利用する。ある著者の著作リストを見たり、ある本がすでに文庫に入っているかどうかの確認に使ったりする。コンピューターを使うのはそこまでで、書店 で現物を確認しないと、本を買う気にはならない。古書については、すでに書いた通りだ。
インターネットで本が買えると知ったとき、これで読者がどこに住んでいようと自由自在に本を選んで買える画期的な時代になったと思った。大書店がない小 都市でも、あるいは山村でも離島でも本が買えるのは確かだが、出版業界にいる知人たちの話では、インターネットで本を買うのは大都市在住者がほとんどだと いう。これはたんに人口の問題ではなく、本を読む習慣がある人が、大都市在住者に多いということらしい。
まったく知らない本に出会うきっかけは、エッセイなどに出てくる本や、論文などの「参考文献」のページに登場する本だということも多い。読んでみたいと 思って手帳に書名をメモするが、なかなか注文できないのは、値段がわからないからだ。今はインターネットで値段はもちろん、在庫の有無も確認できるが、前 コンピューター期にはなにもわからなかった。版元が「岩波書店」とわかっても、それが文庫や新書なら値段を気にせずに買えるが、定価12,000円という こともありうるわけで、むやみに書店に注文を出せない。出版社に電話すればわかることではあるが、どうしても読みたいという本でなければ、「まあ、いい か」ということになり後回しになってきた。今はコンピューターで検索できるようになり、値段はもちろん、品切れかどうかもわかるようになった。 ある特定 テーマに関する本を探す場合は、この「参考文献」から探すというのが効果的だ。たしか、立花隆も書いていたと思うが、さまざまな文献で必ず引用されていた り、参考文献として巻末に書名が明記されている本は、その分野の基本資料になるわけで、その本から入り口を広げていくのが一般的な方法らしい。私自身が書 いた本でも、できる限り多くの参考文献を紹介しているのは、読書案内という理由もあるからだ。
もっと本格的にやるなら、専門図書館や論文目録などをチェックすることになるが、専門的になるのでその話は省略する。