918話 イベリア紀行 2016・秋 第43回

 新アポロ劇場


 前回の滞在ではおもしろそうなコンサートを探した結果、運よく何本かは見たのだが、今回は不調だった。前回通ったアルベニス劇場Teatro Albenizはすでに閉鎖されていた。1940年代に建設されたそうだが、内部はもっと古く見えた。閉鎖に至るそのいきさつをちょっと調べてみたら、不動産をめぐる法律上の問題があって2009年に閉鎖されたらしい。そのあとはショッピングセンターにするという計画があるそうだが、2016年の時点では入り口をふさいだだけだ。
 ライブハウスやタブラオ(観光客相手のフラメンコ酒場)はあまりおもしろそうではない。「ライオン・キング」など有名ミュージカルやまったく知らない演劇など、劇場はいくつもあるが、わたしの趣味ではない。何かおもしろそうなコンサートはないかと調べてみた。

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 ここで、ちょっとガイド風の情報を書いておくと、マヨール広場にある観光案内所に置いてある”esMADRID magazine”という冊子を手に入れると、コンサートや展覧会、ミュージカルや演劇などさまざまな催し物ガイドがスペイン語と英語の両方で紹介している。地図や地下鉄路線図つきなので、私のようにマドリッドで遊んでいたいと思っている旅行者にはかなり役にたつ。デジタル版もある。
http://www.esmadrid.com/esmadridmagazine
 ちょうど「マドリッド・ジャズ・フェスティバル」の開催直前で出演者リストを読んだ。知っている名前は何人かいるが、高い入場料を払って見に行きたいとは思わない。
散歩の途中、新アポロ劇場Teatro Nuevo Apoloの前に出たので、壁に張り出した出演者リストを見ると、ジャクソン・ブラウンノラ・ジョーンズジョン・メイオールなど私でも知っている名前が載っていて、ジョン・メイオールは1度見てもいいと思ったが、日程が合わない。
 ほかに何か情報があるかもしれないと思い、窓口近くに積んであるチラシを読んでみると、「おいおい、これはすごいぞ!」という名前が並んでいた。私同様、「ほんと、すごいね」という人は日本に5000人くらいはいるだろうか。
 “ATLANTIC SONS FESTIVAL”という総合タイトルがついているが、なぜかSONだけはスペイン語だ。「音」の意味だろう。2016年11月から2017年3月にかけて、それぞれコンサートを開く。
Ana Moura
Rodorigo Leao& Scott Matthew(アクセント記号省略)
Kaita Guerreiro
Misia
Dulce Pontes
 ポルトガル音楽祭だ。ロドリーゴ・レオンは、日本でもコマーシャルにも出演したマドレデウスの中心人物。日本では、「攻殻機動隊」のボーカル担当でもあるスコット・マシュー(オーストラリア出身)の方が知られているだろう。リスボン海洋水族館のこの動画の音楽担当が、レオン。
http://www.adana.co.jp/jp/lisbon/
 アナ・マリア、カイタ・ゲレイロ、ミーシャの3人はファド歌手。ドゥルセ・ポンテスはファドも歌うポピュラー歌手。女性ファド歌手は、基本的にアマリア・ロドリゲスのコピーだと私は思っている。うまくコピーできれば、ファド酒場で歌える。コピーといってもものまねではなく、同じような感じでアマリアの歌をうたうということだ。しかし、ファド歌手ではないドゥルセ・ポンテスは自由にファドを歌う。
 この紀行文のリスボンのところでもファドの話をちょっと書いたので、ここではその音を紹介してみよう。
マドレデウスがこれ。Live in Japanか。
https://www.youtube.com/watch?v=bz_oi7bjRxE
Misia
https://www.youtube.com/watch?v=rcqHWfA1BuI
Dulce Pontes
https://www.youtube.com/watch?v=v_2fyB4dj4U
 新アポロ劇場の出演者リストには載っていなかったが、おそらく世界でもっとも活躍しているポルトガルの歌手はモザンビーク生まれのマリーザMariza。
https://www.youtube.com/watch?v=OzrUs08-SWs&list=RDBiU0fkwrviM&index=10
 ああ、このままマドリッドに居続けたくなるが、考えてみれば、東京でもコンサートをやっているのだけれど、歌は旅先で聞きたいという気がして・・・・。
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