1933話 思い出の台湾料理 その2 

麺のおかず(89ページ)

 「おかずを頼まず、麺やビーフンだけ食べることはまずない」と書いている。どんな麺(原料が小麦粉)や粉(米が原料)でも同じなのかわからない。私のわずかばかりの台湾体験から考えると、牛肉麺のように味が濃いものは、かならずしもおかずは必要ないかもしれないが、具があまりない塩味の麺だと、おかずが欲しいかもしれない。

 台湾の麺料理店に行くと、店の一角に炒め物や煮物など各種おかずを盛った皿が棚に置いてあり、客は好きなおかずを選んでテーブルに運ぶ。例えば、この動画

 考えてみれば、日本人はざるそばでもソーメンでも、ひたすら麺をすすっている。おかずが欲しいという人は天ぷらなどを注文することもあるが、つゆだけで食べている人もかなりいる。台湾の場合、私の好みでいえば、汁そばの汁がかなり薄い。湯にちょっと塩を入れたくらいで、うま味も塩味も薄い。そのわけは、麺は粥や飯のように、おかずを食べるという習慣ができたのではないか。

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 粥に関する情報がいくつかある。

 台湾の独身の男が自宅で粥を作りたくなったら、電気炊飯器に米と適量の水を入れ、「粥」モード選んでスイッチを押せば、出来上がりだという。その昔、台湾人留学生に中国語を習っていたコック時代、「簡単な粥の作り方」の話を聞いた。「夜、魔法瓶に湯と米を入れておけば、翌朝には粥ができていますよ」と言っていたが、その実験をしたことはない。

 著者の祖母が作っていた粥は福建式(潮州式も同様)で、ひと粒ひと粒の米が原形を保っている。著者の粥づくりは、水に浸したジャポニカ種の米を土鍋に入れ、強火で加熱し、よくかき混ぜながら煮て、火を消して、ふたをして10分蒸らす。米粒が見えなくなるほど煮込む広東粥はインディカ種の米を使うことが多いそうだ。

 タイの粥も2種類あり、この本の著者がいう「広東粥」にあたる、糊のように煮込んだ粥は「チョーク」という。ちなみに、中国語では「チョーク」、広東語では「チョッ」(発音記号を見ると語尾にKがある)。著者が福建・潮州式と呼んでいる粥は、米粒がはっきり見えるもので、タイ語で「カオトム」という。「米・煮る」という意味だが、なぜこの粥に中国語起源のものではなく、タイ語名がついているのか不明だ。『冨田辞典』によれば、普通の米を煮たのがカオトム、砕米を煮たのがチョークだと説明している。私が食堂で観察していた例では、炊いた飯を湯が入った鍋に投入し、かき回したら、カオトムのできあがる。粥といっても、形状はお茶づけに近い。

ちまき(114ページ)

 台湾のチマキに北部式と南部式があるのを知らなかった。私が今まで得た知識を補って解説すると、こうなるようだ。南部式は、タケの皮を三角に折って、水に浸した生米を入れ、味がしっかりついた具をコメの中に押し込み、しっかり包んで茹でる。北部式は、もち米は味をつけて蒸し、具を入れて包み、10分ほど蒸す。私が親しんでいるのは北部式だが、テレビで見たのが南部式だったので、「ええ、茹でるのか?」と驚いたのを覚えている。南部の人は、北部のちまきを「なんだ、油飯か」とバカにするというが、私は油飯が大好きだから、いっこうに気にならない。