この「日本人の海外旅行史」の連載は、いよいよ最終回となった。最後にバンコクのホテル創業史を取り上げたのはたまたまであって、特に理由はない。
1970年代、リュックを背負った若い旅行者がバンコクのプール付き中級ホテルに泊まるようになったのはベトナム戦争の影響だ。アメリカがベトナム戦争から手を引くのは1973年、戦争が終了するのは75年だ。バンコクで休暇を過ごす米兵(軍隊用語でR&Rという。その語源ははっきりしないが、意味は「休暇と娯楽」)や戦争取材にやってきた貧しいじゃーナリストたちが泊まっていたホテルは、戦争終結により客を失った。その穴を埋めていったのが、世界各地からやってきた売春ツアーであり、リュックを背負った旅行者たちだった。ここで紹介するのは、カオサン地区に安宿街ができる以前の、バンコクホテル年表である。
タイの観光史を調べるには、政策や経済事情の研究も必要で、そういう論文も読んだが、なんだかカッカソーヨー(隔靴掻痒)なのだ。実証的に眺めるにはホテル史を調べるのも手だなと思って、いくつかの資料を集めて年表を作ってみた。資料によって「事実」がいろいろあるので、これはあくまでメモである。
バンコク安宿列伝は、拙著『バンコクの好奇心』に書いたが、文章ではなく、年表で基礎を固めようと試みたが次のメモを使って書いた原稿の一部が、アジア雑語林1795、1796話だ。
このメモを作ったのは1990年末で、それ以後手を加えていないが、バンコクのホテル事情は実に面倒でややこしいので、加筆訂正する気力を失った。
ベトナム戦争が終わった1975年で紹介をやめようと思ったのだが、その後の「タイ観光ブームとホテル」の資料にもなる。長いので、2回に分けて紹介する。地名やホテル名のローマ字表記は統一していない。
バンコクホテル創業年史 1
1876 Oriental
1927 New Trocadero ベトナム戦争中は米軍下士官用ホテル
Royal
New Fuji ?
1933 China Town
1941 Majestic 他の説あり ほかに1942年説あり
1949 Princess ここの経営者がのちにドゥシットを建設 1250 Charoen Krung
1952 Park
1953 Atlanta
1956 Erawan
1957 Viengtai
1960年時点で、営業していたと思われるホテルは上記以外に、Plaza,Grand,Metropole,Palace,Pacific,Coronet,外に、Plaza(Surawongse),
1959 King's(マレーシア大使館となり)
1961 Rama のちのホリディインか(Corner of Silom&Surasak)
1962 Golden Palace( soi 1 Sukhumvit) Capital 米軍用アパートののち、中国大使館。のちに日本人用サービスアパート。
Thai Prachathipathai (カオサンそば。2006年から、Hotel De'Mocに改名)
1963 Nana
1964 Victory
Park
City ニューペプリ 米軍専用
Nanida GPO前
Imperial
1965 Amarin
Federal(Soi 11 Sukhumvit)
Crown
Rex
1966 Montien
Asia
Siam Intercontinental
President 03年からIntercontinental 03年から、タワー部分がSiam Intercontinental
Century 64年説あり
Majestic これは改装らしい
Manora
Rich
Peninsula(295/3 Surawongse)
Reno
R.S.(Rajsubhamitra) 269Larn Luang
Manhattan
Chavalit 67年、米公務員用ホテル、68年からは米人用アパートに。
Rajah
Chao Phya 米軍将校用ホテル。のち、サイアムシティ(447 Sri Ayuttaya)
Continental Phahon Yothin
Bangkok Tower ウィタユ ルンピニ警察そば
Windsor