498話 深夜3時半の不倫から その2

 歌手別にはすでにCDを何枚も持っている。オーティス・レディングアレサ・フランクリンやクラーレンス・カーターや、サム&デイブなどなど。モータウンのBOXセットも買った。基本的に英語の歌のCDは昔も今もほとんど買わないのだが、例外的にR&Bはどうしても欲しくなる。中学から高校あたり、1960年代に毎日ラジオで聞いていた音楽を、今度はCDできちんと聴いてみたいのだ。
 あのころは、街に音楽があふれていた。イヤフォンで音楽を聴く人はまだほとんどいなかった。高校時代には、まだウォークマンはなかった。街を歩いていても、さまざまな場所から、さまざまな音楽が聞こえてきた。聴く気のない音楽も、趣味に合わない音楽も、いつも体にまとわりつき、だから、レコード大賞の曲も、紅白歌合戦の出場者の歌も、アフリカやフランスの歌も耳にした。あらゆる音楽が、私を取り巻いていた。田端義夫も菅原都々子も、南アフリカ出身のヒュー・マサケラもラビ・シャンカルシタールもラジオで聞いた。マイルス・デイビスの最新のジャズも古いタンゴもラジオから流れていた。さまざまなジャンルの音楽が、絶えずまとわりついていた。聞く気のない音楽も、次々に私を包みこんでいた。美空ひばりは偉大な歌手だったが、だからと言って彼女のレコードだけが売れるということはなかった。そういう幸せな時代だった。
 R&BのBOXセットはすでに「100 Soul Classics」という5枚組を持っていて、これはお買い得だった。安くて、しかも内容が濃い。以下のCDは、タイトルはちょっと変わっているが内容は同じだろう。http://www.amazon.co.jp/Hits-Soul-Classics-Various-Artists/dp/B000LMPFJ8/ref=sr_1_3?s=music&ie=UTF8&qid=1362986683&sr=1-3
 これもいいのだが、もっと聞きたくて、次のこれを注文した。タイトルのよく似た5枚組だ。「100 Hits Soul」も、安くて、内容が濃い。  http://www.amazon.co.jp/100-Hits-Soul-Various-Artists/dp/B000VT2NT6/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1362986912&sr=1-1
1枚目のCDの1曲目は、Arthur Conleyの「Sweet Soul Music」
 http://www.youtube.com/watch?v=sp3JOzcpBds
 「Do you like good music /That Sweet Soul Music・・・・」という歌声を聴いていると、渡辺貞夫植草甚一が好きな言い方でいえば、「ご機嫌だねえ」という気分になってくる。懐かしいだけじゃない。もう何年も、ワクワクしてくるこんな音楽を耳にしていないからだ。
この気分を別の歌で表現するなら、これだな。”Dancing in the Street” 。中学3年生の英語力でも簡単にわかる歌詞が画面に出てくるから、街に音楽があふれていた時代の幸せがよくわかる。
http://www.youtube.com/watch?v=eQpbURSFaNU
 蛇足を書いておく。上に紹介した2曲ともに「Sweet Music」という語が出てくるが、当然「甘い音楽」ではなく、「心地いい」「わくわくする」「快適な」といった意味だ。1950年代的な言い方なら、「イカシた曲」かな。
私の体の中に突然湧きだしたR&Bの泉のせいで、いままで「ナット・キングコールみたいで、きっとつまらないだろうなあ」と感じて、1枚もCDを買っていなかったサム・クックを、この際まとめて聞いてやれというわけで、BOXセットを買ってみた。私の予測は偏見なのか、それとも正しい想像だったのか。まとめて聞いてみたら、私の感覚が正しいとわかった。甘いだけのつまらない歌手だった。というわけで、オーティス・レディングの株が一段と上がる結果となった。
 引き続きYouTubeでR&Bを聞いているが、CDをBOXセットでまとめ買いしたくなるような歌手(あるいはグループ)はいない。ジェームス・ブラウンは好きじゃないし・・・。