617話 なんだ、この飛行ルート。トンデモ便を少し

 今からもう10年以上前になるが、突然、「ポルトガルに行きたい!」という欲望が湧き出して、インターネットで格安航空券を探した。その当時、成田からリスボンに行くもっとも安い航空券は、ロシアのアエロフロートのもので、54000円だったか64000円だったか忘れたが、とにかくそのくらいの値段で、ほかの航空会社の料金のほぼ半額だった。まだ、「燃費サーチャージ」などという妖怪が姿を見せていない時代だった。
 その当時、成田・バンコクの便は、旅行期間がひと月を超えると7万円近くしていたから、アエロフロートは確かに安いのだが、詳しいルートを調べると、「おい、おい」と言いたくなった。アエロフロートだからモスクワ経由なのは当然だが、モスクワで2泊か3泊の待ち合わせなのだ。週に1便か2便程度のリスボン行きに乗るためには、モスクワで滞在する必要があり、もちろん復路も同様だ。ロシアでの滞在費は自腹だから、このアエロフロート便はけっして安くはない。
 最終的にどうしたかというと、タイ航空のバンコクマドリッド便が2万円だとわかり、成田・バンコク便と合体させて、往復約9万円の航空券を購入した(残念ながら、今はもう、こういうルートの安い航空券は手に入らない)。
 10年前の「問題あるルート」はこの程度だったのだが、今はとんでもないことになっている。いや、昔から「トンデモ便」(とんでもないルートの便)があったのに、私が知らなかっただけなのかもしれないが。
 ついさっきまで、世間の夏休みが終わって、世の中が落ち着いたらどこかに行こうかと、格安航空券情報を探していて、絶好のサイトを見つけた。格安航空券会社のサイトの料金というのは、あの「燃費サーチャージ+諸費用」を加えない金額を表示しているから、表示料金にいくら加算されるのかすぐにはわからないように細工されている。例外がH.I.S.で、ここは総額表示だが、この会社では扱わない航空会社の便に関してはわからないわけで、やはり不便だった。
 そういう苦労をしていて見つけたのが、名前がかなり恥ずかしい「トラベルコちゃん」。
 http://www.tour.ne.jp/w_air/
 ここは総額表示の上に、飛行ルートがすぐに確認できる。しかも、日程欄をそのままにして、目的地を変えて検索できるから、旅行先を変えてもすぐに検索できる。「いままでの苦労はなんだったのか!」と悔しくなるほど楽しく簡単に調べることができるから、たった今、数時間も遊んでしまったのだが、ここで「トンデモ便」を見つけた。
 10月に4週間ほどタイに行くとする。成田・バンコク往復の一番安い航空券は、タイ・エアアジアの便だが、その次は羽田発のベトナム航空を利用するものだが、こういう日程が一例となる。
 羽田 16:35発→ハノイ 20:00着/ハノイ 翌日09:00発→バンコク 10:50着
ベトナム航空便をうまく使うなら、少し高い料金のものを選んで、乗換え時間の短い便を選ぶか、ベトナムで滞在できる便を選んで、ベトナムとタイの2か国に行く旅にするというのもいいが、快適にタイ往復したいという人にはふさわしくない。だから、安いのである。
 久しくインドに行っていないから、うまい飯を食いにインドに行こうかと、目的地を「デリー/ニューデリー」にして検索すると、もっとも安いのはカタール航空の便だと分かった。その飛行ルートを調べて、腰を抜かしそうになった。
 羽田 01:00発 カタール・ドーハ空港06:00着/ ドーハ空港 20:35発 デリー(インディラガンジー空港)翌日 03:00着 合計所要時間 29時間30分
 頭に世界地図が入っている人は、「なんだい、これ!」とびっくりするはずだ。目的地インドを飛び越してカタールに飛び、インドに戻ってくるのだ。復路は、インドからカタールに飛び、羽田に向かうのだ。こういう無理やりの「トンデモ便」は、カタールでカネを使わせるためだろうか。日本からヨーロッパやアフリカに行くには、カタール航空が安いというのが、現在の格安航空券事情らしい。
 こういうことを考えながら、世界各地に想像の旅をしているのも楽しい。