2004-01-01から1年間の記事一覧

61話 コショーの話

前回の話に関連して、コショーの話を書き加えたい。 タイの食文化を調べていた ときに気がついたのだが、タイでコショーをよく使うのは古くからあるタイ料理ではなく、ここ100年ほどの間に伝わった中国系料理だということだ。客にも よくわかるのは、麺類だ…

60話 インドカレーにまつわる伝説

カレーが好きで、インドに興味があり、しかし日本のインド料理さえまだ食べたことがなかった高校生のころ、テレビを見ていたら料理研究家がインドのカレーについて話していた。 「インドのカレーは、水がたくさん入っているからドロドロしていないんです。そ…

59話 本とどう出会うか(6)

小社からの案内で 出版社に愛読者カードを送ると、「新刊の案内」といったダイレクトメールが届くことがあるが、そういう案内で購入を決めたことはない。私にDMを送るのは無駄である。 案内というのとちょっと違うが、文庫版雑誌「IN POCKET」(講…

58話 本とどう出会うか(5)

人に勧められて 本との出会いは一期一会だから、見つけたらすぐ買うこと。有 名な学者や評論家や小説家たちはそんなことをよく言うが、それは潤沢な資金と広大な書庫を持っている人だから言えることで、貧乏ライターには読みたいと 思った本を片っ端から買え…

57話 本とどう出会うか(4)

書店で現物を見て 新聞の書籍広告で知った本を書店で探すことも少なくはないが、単行本に関して言えば買った本の大半は書店で初めてその本の存在を知ったことになる。神田で買うことが多いから、広告が出る前に書店で実物と出会うことも少なくないからだ。 …

56話 本とどう出会うか(3)

テレビ・ラジオの番組で 書評の番組やコーナーをあまり見ないので、私自身にはなんの影響力もない。一般読者にとっても、さほど影響力はないだろうと思う。何人かの編集者の話ではそうだったのだが、別の意見もある。 ちょっと確認したいことがあって、めこ…

55話 本とどう出会うか(2)

雑誌の広告で 雑誌をほとんど読まないので、雑誌の出版広告を読んで購入を決めるということもない。 新 聞 ・ 雑 誌 の 紹 介 記 事 を 読 ん で 紹介記事や書評などで、その本を買いたくなることはほとんどない。私が読む新聞の書評欄で、一年間にとりあげ…

54話 本とどう出会うか(1)

愛読者カード 新刊を買うと、愛読者カードが挟み込まれていることがある。かつてはよく書いたのに、最近あまり書かなくなったのは、著者や編集者に感謝の気持ちを伝えたいと思うような本に、ほとんど出会わないからだ。 愛読者カードには、「この本を何でお…

番外「 本屋は気楽な稼業か」への反論と解答

―「めし屋はいいな」― 特別寄稿:アジア文庫店主 まさか、前川さんに宿題を出されるとは思わなかった。「アジア文庫のレジ裏から」の更新が、あまりにも少ないことに、業を煮やしてのことでしょう。 「めし屋のオヤジと、本屋のオヤジと、どちらが気楽な稼業…

53話 本屋は気楽な稼業か

サラリーマンが定年後にやりたい職業といえば、ラーメン屋や居酒屋などとともに、古本屋 というのも人気が高いらしい。いずれも、組織にしばられない自由さを求めてのことだろう。古本屋の場合は、それと同時に、「本が好きで」、だから「一日 中、本を読ん…

52話 魔界に足を踏み入れて(6)

ネット古書店から見えてきたこと インターネットで古書を注文して気がついたことのひとつが、書店側の案内ページに「ノークレーム、ノーリターンでお願いします」という文章だった。つまり、「文句を言わないでくれ、返品しないでくれ」という意味だろう。 3…

51話 魔界に足を踏み入れて(5)

『外国旅行案内』と68年の旅行事情 日本で最初の、本格的な海外旅行のガイドブックは、日本交通公社が52年から発行していた『外国旅行案内』だ。77年に『海外旅行案内』とタイトルが変わり、82年まで発行した。 この本は、70年前後に新刊書店で何度も見かけ…

50話 魔界に足を踏み入れて(4)

『ロンドン−東京五万キロ』と道路事情 1956 年、ロンドンから東京までドライブするという、当時としては壮大な計画が実行された。企画をしたのは、当時のロンドン特派員だった。任期が切れて帰国する ことになり、どうせならおもしろい旅をして日本まで帰ろ…

49話 魔界に足を踏み入れて(3)

『旅の技術 アジア篇』のことなど インターネット古書店に注文を出して数日後から、本が到着し始めた。実をいうと、注文した本のなかで、その存在をまったく知らなかった本というのはほとん どない。ネット上では、その本の内容がよくわからないからという理…

48話 魔界に足を踏み入れて(2)

ついに注文してしまう ある夜、巨大な旅行関係の古書サイトがあるのを発見した。何年もインターネットで遊んでいる人には、「なんだよ、そんなもん」と言われそうだが、私は初心者中の初心者で、しかも、コンピューターのことなど勉強したくもないのだから、…

47話 魔界に足を踏み入れて(1)

肩を押されて ついに、禁断の世界に足を踏み入れてしまった。 そこが魔界だとわかっているから、けっして足を踏み入れていけないと常々自分に言い聞かせていた。境界線の向こうで待ち受けているのは麻薬のようなもの らしく、束の間の快感のあとには、苦渋の…

46話 異文化を知る一冊 ―― 80年代異文化紹介書籍事情

現在、語学教科書を多く出版している三修社が、文庫本を出していたことがある。普通なら 「三修社文庫」とでも名づけるところだが、文庫名としては異色の「異文化を知る一冊」という名前だった。外国事情と異文化体験に特化した文庫で、書店の棚 にずらりと…