2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

920話 イベリア紀行 2016・秋 第45回

川を見に行く その1 マドリッドは殺風景である。あまり古い歴史のない都市だ。リスボンのように、街なかに小高い丘でもあれば視界に変化があるのだが、街なかに見上げる丘がない。パリのセーヌ、ブダペストのドナウのように、街が川で分断されて、いくつか…

919話 イベリア紀行 2016・秋 第44回

MADRIDの発音 毎日マドリッドを歩いた。散歩の助手は、ミシュランの区分地図だ。バルセロナでも、このシリーズの区分地図を愛用した。今どき、印刷物の地図を持って散歩している者は、ほぼ絶滅危惧種だろう。 東西南北至る所を歩きまわるから、「東奔西走」…

918話 イベリア紀行 2016・秋 第43回

新アポロ劇場 前回の滞在ではおもしろそうなコンサートを探した結果、運よく何本かは見たのだが、今回は不調だった。前回通ったアルベニス劇場Teatro Albenizはすでに閉鎖されていた。1940年代に建設されたそうだが、内部はもっと古く見えた。閉鎖に至るその…

917話 イベリア紀行 2016・秋 第42回 

本とCDとレコードと 2002年のリスボンでよく行ったのが、アルマゼンス・ド・シアードという小さなショッピングセンターだった。そこのタワーレコードとFnac(フナック)に通い、CDとDVDを買った。ファドやカポ・ベルデの音楽を中心に買いまくったのだが、2…

916話 イベリア紀行 2016・秋 第41回

あのときのスペイン。マドリッド 後編 2002年の秋、明日はタイに飛ぶという日の午後だった。 ソル広場から宿へは、ゆるい上りになっていて、路地の両脇に売店のような店があった。数段しかない階段をゆっくり登っていると、突然、足元で太いゴムひもが切れる…

915話 イベリア紀行 2016・秋 第40回

あの時代のスペイン、マドリッド 中編 それから27年後の2002年、私はふたたびマドリッドに来た。宿はやはりソルだ。ヨーロッパのことだから、町並みは何年たっても昔のままだろうと、あの時の旅の風景を求めて歩いてみたのだが、記憶がはっきりしない。どの…

914話 イベリア紀行 2016・秋 第39回

あの時代のスペイン、マドリッド 前編 バルのカウンターで隣り合わせた人に、タパス(つまみ)の食材と料理法に関して質問したことがきっかけで、しばらく世間話をすることになった。 「スペインは初めてですか?」 その男は、私に聞いた。 「いや、何度か来…

913話 イベリア紀行 2016・秋 第38回

また、ソルSolに 早朝のビルバオ。地下鉄でバスターミナルに行き、すぐに出るマドリッド行きのバスに乗った。ゲルニカのことをまだ考えている。ロンリープラネットの“Spain”には、「ゲルニカはバスク人の精神的支柱といえる場所だから、攻撃を受けた」とある…

912話 イベリア紀行 2016・秋 第37回

ゲルニカへの小旅行 そのゲルニカ・ルモに行った。 ビルバオの観光案内所で教えてもらったとおり、案内所近くのバス停からゲルニカに向かった。海がある北方向に走っているのに、街を出るとすぐさま荒野だった。レオンからビルバオに来た時と同じように、刈…

911話 イベリア紀行 2016・秋 第36回

なぜゲルニカを爆撃したのか バスク州ビスカヤ県の県都ビルバオの北東、バスで50分くらいのところにゲルニカがある。ピカソの「ゲルニカ」で有名な街だ。この絵の話はマドリッドに行ってから詳しく書くことになるが、そのゲルニカに行ってみることにした。 …

910話 イベリア紀行 2016・秋 第35回

充電 ビスカヤ橋の失敗に懲りて、カメラ用の充電はこまめにするようになった。充電済みの乾電池をつねにバッグに入れておいて、いつでも撮影できるようにしたが、やはり少々わずらわしい。こういう事態は多少予想をしていて、カメラ選びをしているときに、乾…

909話 イベリア紀行 2016・秋 第34回

ビスカヤ橋 ビルバオに行こうと思った理由はふたつある。ひとつは、「バスク文化の中心地」を見てみたいというもので、これは見込みがはずれた。素人でもわかる「バスクらしさ」はない。もうひとつはビスカヤ橋だ。この橋をテレビで見て、「あっ、行きたい。…

908話 イベリア紀行 2016・秋 第33回

ややこしいが、ちょっとバスクの話を ベレー帽は、バスクが発祥で、バスクの男の象徴のように言われ、テレビ番組の旅番組でバスク地方を取り上げると、帽子店探訪をするが恒例である。しかし、ビルバオ街を散歩していてベレー帽をかぶっている人を見かけるの…

907話 イベリア紀行 2016・秋 第32回

ビルバオの宿 知らない街に夜遅く到着したので、バスターミナルから旧市街まではタクシーを使うことにした。ビルバオ川を渡ってすぐのところで、タクシーは止まった。「その辺にホテルがあるよ」という運転手の指先の方向に歩きだし、今夜は高くてもしょうが…

906話 イベリア紀行 2016・秋 第31回

荒野のバス旅行 昼食を食べて、バスの客となった。SDCで買ったミシュランのスペイン地図を広げて、道路を確認する。レオンからも、引き続き西から東に進む旅なのだが、いままでの鉄道の旅と風景がまったく違う。これほども違うのかと疑わしくなるほど、車窓…

905話 イベリア紀行 2016・秋 第30回

レオン 10世紀から12世紀まであったレオン王国の首都が、ここレオン。サンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路の途中にあるため、交通の要衝として栄えた。そこまでは知っていたが、調べてみれば、観光のほか、やはり商工業地域になっているらしい。駅やバス…

904話 イベリア紀行 2016・秋 第29回

森の旅 SDC(サンティアゴ・デ・コンポステーラ)から、一気にバスクのビルバオに行こうと思った。バスの便を調べてみると、夜行か昼の便の2本で、景色が見えない夜行便を使う気はない。しかし、昼間の便だと、ビルバオ到着が夜になる。知らない街に夜到着す…

903話 イベリア紀行 2016・秋 第28回

SDCの恵み スペインとて、朝の8時はけっして「早い時刻」ではないのだが、東京の秋の朝4時くらいだ。街灯がないと、暗くて歩けない。ポルトガルはイギリスと同じ西ヨーロッパ標準時間を採用しているが、スペインはフランスなどといっしょの中央ヨーロッパ…

902話 イベリア紀行 2016・秋 第27回

ガリシア語 ビーゴのあるガリシア地方を中心に、その外側でもガリシア語が使われている。ポルトを出た列車がビーゴのギサール駅に着いたときに、その事実に気がついた。駅の表示が二段になっているのだ。2年前、バルセロナ空港に着いたとき、表示が二段にな…

901話 イベリア紀行 2016・秋 第26回

雨のビーゴ ポルトは朝から雨だった。昼前にはやむだろうと思っていたのだが、しょぼしょぼといつまでも降っていた。明日ビーゴに行く予定だが、バスで行くとなると、雨のなか、荷物を両肩にかけて傘をさして歩いて行くのは面倒なので、鉄道を使うことにした…

900話 イベリア紀行 2016・秋 第25回

Los Lunes al Sol [書きためたこの紀行コラムは、すでに12万字、原稿用紙にして300枚分を超えてしまった。今までのように、隔日で更新していくと、4月になってもまだ連載が続いていそうなので、更新回数をもう少し増やすことにする。それにしても、NHKBSで…

899話 イベリア紀行 2016・秋 第24回

ビーゴ(Vigo)への長い旅 ポルトガルのポルトから北上し、国境を越えてスペインに入ると最初に出会う大きな街がビーゴだ。もちろん、今の両国では「国境」など旅行者には関係ない。ビーゴは、ほとんどの日本人は耳にも目にもしたことのない街だが、カナリア…

898話 イベリア紀行 2016・秋 第23回

ポルトのとてつもなく安い飯屋 街を散歩していると、前回の散歩を思い出す街角があって、「ああ、ここだ」などと懐かしくなる。かつて、たまたま食べたことがある食堂の前に立ったときは、やはり「ああ、ここだったなあ」と店全体を眺めた。店名はもともと覚…

897話 イベリア紀行 2016・秋 第22回

書店とフードコート ポルトのベント駅を出たとたんに、この街は変わったとわかった。歩道に人があふれている。ベント駅から南のドウロ川までの500メートルくらいは、以前から観光客がやってくる地区だとはわかっていたが、これほど人はいなかった。ドウロ川…

896話 イベリア紀行 2016・秋 第21回

ポルトの、あの宿へ 心残りの朝だった。このままいつまでもリスボンにいたいと思いつつ、宿を出た。名残惜しさを感じる街があることは、しあわせなことだ。 感じとしては、「夜明けごろに」リスボンを出たという暗さだった。朝9時半にサンタ・アポローニャ…