455話 タイの旅の本と、東京の本

 
 タイの本屋を巡っていて、だいぶ前から気が付いていたのは、タイ人用のガイドブックが多く出版されていることだ。海外旅行もあれば、国内旅行もある。観光地巡りのガイドから始まったのだが、いまでは食べ歩きガイドもだいぶでている。
 トヨタ自動車保険のAIS、タイ石油公社が援助して、『全国77県 最高のカーオケーン』と同じシリーズの『粥』編が出ているのを見つけたが、とりあえず『カーオケーン(カレー汁かけ飯)』だけを、料理図鑑の資料として買った。タイも、自動車がないと使えないガイドブックがどんどん発売される時代になったということだ。極貧の民はまだいるが、無理すれば自動車が買えるくらいの中産階級が増えていることは確実だ。
タイ人の海外旅行は、ガイドブックの時代から、体験記の時代に入ったこともわかる。『東京ブリー』(タイ語)という東京ガイド&エッセイを出版したタイ人ライター、ぺー・シリパンが、「こんな本も出てますよ」と私に見せたのは、温泉が大好きなタイ人女性の日本入浴旅行記。これには、おどろいた。というのは、タイ人は熱い湯には入れないとか、人前で裸になれないなどと言われていることを知っていて、実際に日本に行ったタイ人が「旅館の大浴室がつらかった」などと言っているのを実際に聞いたことがあるからで、時代が変わった。まあ、温泉が大好きなタイ人はまだ少ないと思うが、そういう本まで出る時代なのだ。マレーシアでは、日本の東京食べ歩きガイド数種が中国語訳で出版されているのを見つけた。中国語版なら、世界の中国語人が使えるけで、こういう本を持って、築地市場を巡ったり、ラーメンを食べ歩いたりするらしい。
 タイ語の本じゃ読めないよとおっしゃるだろうから、今度は英語の本。日本にわずか半年いただけだというフランス人イラストレーターが描いた東京スケッチ“Tokyo on Foot”
Florent Vhavouetは、アマゾンでも評判がいい。
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%A7%E3%83%BC%E6%95%A3%E6%AD%A9-%E2%80%95Tokyo-Foot-%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%A9%E3%83%B3-%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B4%E3%82%A7/dp/4805311371/ref=sr_1_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1351391120&sr=1-1
 この本を見つけたのは、クアラルンプールの紀伊国屋書店だが、ここで買ってしまうと、旅の間ずっと持ち歩かなければいけない。他の国でも買えそうな本なら、あとで買おうということにした。アマゾンなら、もしかして日本で買う方が安いかもしれないという想像もあった。
 本屋でこの本を見たら、欲しくなるでしょ。バンコク紀伊国屋で再会し、我慢できずに買った。で、帰国してアマゾンの値段と比べると、大きくはかわらないが、バンコクの値段がやや安い。内容を確認してから買いたい人は、日本の紀伊国屋にもあるようなので、洋書の棚で探してみるといい。「画像検索」しても、いくつかでてくる。この手のイラスト本を見てきた人は、きっと『ニューヨーク人間図鑑』を思い出すかもしれない。日本では、いまでも、旅のイラスト日記というのは多数出ているが、このように手と頭と足を使った本はとても少ない。