安宿を探せ、旅行ガイド 2
引き続き、旅行ガイドの話だ。パラゴンをどうやって知ったかという話の続きだ。
1974年のインド旅行で、初めてカルカッタに行った。そのときに、かのパラゴンホテルに泊まっていたことを覚えている。「かの」というのは、のちに有名になるからだ。バンコクの楽宮旅社に泊まった翌年、カルカッタのパラゴンに泊まっているんじゃ、まるで谷恒生じゃないかとつっこみたくなる人は、すでに老境に入ったお年頃だが、私が泊まったのは、谷が書く10年ほど前の時代だ。参考までに、一応書いておくと、谷恒生の次の2冊のことだ。『バンコク楽宮ホテル』(講談社、1981)と『カルカッタ大真珠ホテル』(講談社、1984)。大真珠を書いて、「パラゴン」とルビがふってある。つまらない小説だとは思うが、1980年代前半ごろのインドの、日本人旅行者事情はわかる。
1974年に、私はなぜカルカッタのパラゴンホテルを知っていたのか。どこかで旅行者に教えてもらったのでなければ、資料を読んだのか。そんな安宿が出ていそうな本と言えば・・・、と考えて、前回、1970年代前半に出版された資料をいろいろ点検した。70年代後半だと、雑誌「オデッセイ」のほか、ガイドブックも何点か出版されている。例えば、こういう本だ。
『旅の技術●アジア篇』(旅の技術編集室編、風涛社、1976)
『インドを歩く本 ひとり旅全ガイド』(インド・ネパール旅の会、文潮出版、1978)
『インド・ネパール旅カタログ<ライブ>』(インド・ネパール精神世界の旅編、プレイガイド・ジャーナル社、1978)
『体当たり!ケチケチ世界大旅行』(坂本康司、編集考房、1979)
しかし、70年代前半だと、やはり、これか。頭に浮かんだのは、『おまえも来るか! 中近東』(まるこぽーろ旅行団、まるこぽーろ旅行団出版局、1971年)だ。この本をいつ買ったのか調べてみると、1973年12月だ。つまり、一度目のインド旅行から帰ってすぐ、二度目のインド旅行の前だから、情報源がこの本である可能性はあるなと思って、情報ページを見ると、あれ、あれ。
カルカッタの安宿として紹介しているのは、Y.M.C.Aのなかにあるユースホステルだけだ。おそらく、この情報源は、”International Youth Hostel Handbook”だろう。世界中の安宿(もちろんユースホステルだが)ガイドが載っていて、地図や簡単な観光ガイドもついていた。ヨーロッパでは最高のパワーを発揮するが、アジアやアフリカ、中南米では利用価値はそれほど高くはなかったが、ないよりはだいぶマシだった。
『おまえも来るか! 中近東』ではないとすると、さて。『アジアを歩く』(深井聰男、山と渓谷社)か。初版は1974年7月だが、私が買ったのは1975年1月だ。だから、この本が,1974年の私の旅のガイドではなかった。インドから帰って数年後に、インド方面に行きたいという友人のために、その初版をあげた。今手元にあるのは、1978年の第2版だ。参考までに、カルカッタの安宿として紹介されている宿の名を書き出す。
Modern Lodge、Salvation Army、Shilton、Y.M.C.A、Lytton Hotel、Fairlawn
パラゴンが、本の情報ではないとすると、ミニコミか、それとも、旅行者から聞いた情報だったのだろうか。