990話 大阪散歩 2017年春 第29回

 雑話集 その1


●関西に来ると、「あー、そうだった」といつも思い出すのは、交通費が高いことだ。「関西 交通費 高い」などと検索すると、いくつもの情報がヒットする。関東と比べて実際に高いのだ。大阪だけでなく、神戸も京都も高い。例えば、地下鉄では、大阪市営地下鉄3〜7キロ区間は230円。東京メトロだと6キロまで170円だ。運賃が高い都営地下鉄なら5〜9キロまで220円だからそれほど変わらないのだが、東京では都営地下鉄東京メトロと比べれば利用価値は低いが、大阪の地下鉄は大阪市営だ。神戸にしても京都にしても市営地下鉄だから、ちょと乗っただけで、うんざりするほど高額になる。これが、「関西の交通費は高い」と感じる原因のひとつだろう。
●大阪はどういう街かというテーマは、さまざまな人のさまざまな意見や感想があるだろうが、私が散歩をしていて感じたのは、「大阪の三種の神器は、スジ、カス、ホルモンである」だった。牛すじは、味噌や醤油の煮込みやおでん、お好み焼きに入れる「ネギすじ焼き」、「牛すじカレー」もある。かすは油かすのことで、これはすでに解説した。ホルモンとは、広義には肉以外の内臓などすべての部位を指し、狭義には大腸と小腸をさすそうだ。そういう物を、「ホルモン」と呼ぶのは、「捨てる物」であるという関西弁の「放るもん」から「ホルモン」となったという説がある。私の記憶では、『文化人類学辞典』(弘文堂、1987)に「放るもん説」が出ていると、その辞典の編集者が教えてくれて初めて知った。「つまらん親父ギャグですよ」と一笑に付したが、正しさよりもおもしろさを重要視するマスコミの手でこのダジャレはたちまち広がり、先日見た韓国の食文化テレビ番組でも、焼き肉と在日韓国人をテーマにしたトークで、この「放るもん説もある」と紹介していた。
現在は、「1920年代から、精力がつく料理としてホルモンの名が使われてきた」というのが定説になっている。今、現物が我が家で行方不明で確認が取れないのだが、たしか『ホルモン奉行』(角岡伸彦新潮文庫、2010)だったと思うが、豚の内臓は供給過多で多くは食用にはなっていないという記述があったと思う。牛の内臓は高値で取引されるのだが、豚の内臓はあまり売れないので、結果的に「放るもん」になっているそうだ。
ホルモンは鶴橋ではなく、新世界の焼き肉屋で「ホルモン定食」を食べた。あっ、いま思い出した。2度食べたなあ。その昔、大阪で初めて食べたホルモンも新世界だった。立ち食いうどんの店にあった「ホルモンうどん」だ。素うどん(関東の、かけうどん)に薄味で煮た豚の大腸小腸をのせた料理で、この地区での正しい食べ方は、1合の酒のあて(肴)にホルモンをつまみ、そのあとでうどんを食べて腹を満たす。そういう料理だったが、うまいホルモンではなかった。
私は内臓とすじが好きだ。ただし、肝臓と腎臓はうまいとは思えない。

 中華料理の店に入ったら、「ホルモン炒め」というのがあって、うれしくなって、チャーハンといっしょに、つい注文してしまった。


 こういうのが、「ザ・オオサカ」のいかにも看板である。これぞ、大阪名物ベタ看板。