2014-01-01から1年間の記事一覧
母は上海で育ったが、中国料理の思い出話はあまりしなかった。祖母は基本的に日本料理しか食べない人で、しかも偏食の激しい人だったらしく、おまけに「支那人」を見下していたから、中国の食べ物を極力、口にしなかったらしい。中国の食文化との出会いは、…
いまはCDそのものが売れない。とりわけワールド・ミュージックが売れないらしい。ディスクユニオン新宿本店の4階は、かつては「ワールド/ラテン」の階だったのだが、いまは「ラテン/ブラジルフロア」という名になっている。ワールド・ミュージックのC…
さまざまな音楽の本は読むが、CD購入のための情報を探したりはしない。音楽雑誌は読まないし、新譜情報にも興味がない。10年前の発売でも70年前の発売でも、そんなことは音楽の質とは関係がないのだから、新譜を求めて常に情報網を張りめぐらせているとい…
今読んでいる本がつまらなくて、「高いカネを払ったのになあ」と悔しい思いで読み続けているが、しだいに根気が切れてくると、パソコンで遊びたくなってくる。多くの人はパソコンなどでゲームをやるのだろうが、私は先日に引き続いて、口にするのも恥ずかし…
今からもう10年以上前になるが、突然、「ポルトガルに行きたい!」という欲望が湧き出して、インターネットで格安航空券を探した。その当時、成田からリスボンに行くもっとも安い航空券は、ロシアのアエロフロートのもので、54000円だったか64000円だったか…
もうずいぶん前になるのだが、知り合いの教授が嘆いていたことがある。学生が書いてきたレポートを点検していたら、まったく同じものが3通あったというのだ。レポートが手書きの時代は、盗作・盗用したとすれば、意地でもまったく同じにしないように改変を…
NHKEテレで、「ニッポン戦後サブカルチャー史」という番組が始まった。8月1日(金曜日)が第一回の放送で、全10回もやるらしい。講師は、劇作家の宮沢章夫。第一回の放送を見て、「なんじゃ、これ。ひでーなー」と思った。 まず、「サブカルチャー」の意…
その昔、運動部員は練習中は水を飲むことを禁じられていた。「水を飲むとバテるから」というだけで、科学的説明はなかったと思う。日本の何万もの体育教師や運動指導者たちが、その説を金科玉条として信じて疑わなかったのだから、脳みそ筋肉人間の行動は恐…
銀座とパリ 後編 椎名誠の『風景は記憶の順にできていく』(集英社新書)に関連するこのコラムでは、タイトルどおり「銀座とパリ」の話だけ書く予定だったのだが、どうしても新宿の話を加えたくなった。この新書の最終章「新宿―旅人は心のよりどころに帰って…
銀座とパリ 中編 注文した本がすぐに届いた。『屋上の黄色いテント』(椎名誠、柏艪舎発行、星雲社発売、2010)は短編小説集だ。銀座を舞台にした「銀座の貧乏の物語」と「屋上の黄色いテント」の2作は期待していたほどにはおもしろくなかったが、予想外の…
銀座とパリ 前編 久しぶりに椎名誠の本を読んだ。彼が本についていろいろ書いた文章は躊躇せずに買うが、旅行記となると手を出さなくなったのだが、『風景は記憶の順にできていく』(椎名誠、集英社新書、2013)は、「思い出の場所を訪ねて・・・」という構…
明治の日本、ジンバブエ、そして東京 明治時代に日本を訪れた西洋人の行動に関する本は、名著『逝きし世の面影』(渡辺京二、平凡社ライブラリー、2005)があるが、日本語未訳の文献も加えて同じような本を書いた『グローブトロッター 世界漫遊家が歩いたニ…
本棚で発見 ウチで本探しをしていると、本棚の前で「おおっ!」と声をあげたくなることがある。そのほとんどは、すでに買っている本をまた買ったことに気づいたときだ。買って来た本を読み始めてすぐに、「あれ、この本、読んだぞ」と気がつくこともあるが、…
『人力車』の奇跡 インドでリキシャ、タイでサムローなどと呼ばれている三輪自転車や、エンジンがついた三輪自動車について本格的に調べてみようと考えた時、かねてから欲しいと思っていた本を買う決心をした。人力車に関する世界唯一にして最高の研究書『人…
『追憶のカンボジア』 お付き合いでしかたなく、今もタイの小説を読んでいるが、本当におもしろくない。宇戸清治さんが翻訳する「ポストモダンとかいう、まるでおもしろくない小説」を、おもしろいとは思えないのだ。もともと小説が嫌いで、「文学的作品」に…
最近の雑誌で、台湾を特集したものが多くなったような気がする。その昔、女性の旅行客が香港に多く行った時代があり、香港が中国に返還された1997年ごろから、香港旅行と香港映画と香港ポップの人気が一気に落ちて、しばらくして突然韓国に人気が集まり、こ…
拾う神ありや 〜ボツ企画集 この著作集の企画は、天下のクラマエ師をおもちゃにして遊ぼうとしたのでは断じてない。私が読みたい本で、蔵前さんならいとも簡単に書ける本を考えてきたのである。しかし、思いついた企画を世間に問う前に、自分で「こりゃ、だ…
『かごんまボーイ』 いままで何度も蔵前さんに、「書いてくださいよ」とお願いしてきた本は何冊もあり、そのなかに『蔵翁自伝』がある。思い出話を書いてよとお願いすれば、「そんな昔のことは覚えていない」と、リック・ブレイン(カサブランカ)のようなセ…
『私立クラマエ旅行図書館』 前回の『僕のインド大全』で企画したインド本を評論する章をやめて、旅行関連書を地域に関係なく全部まとめて1冊にしようという企画である。旅行書には実用的な旅行ガイドブックもあるが、旅行のしかたによっては、あるテーマを…
「蔵前仁一書きおろし著作集」の企画案はまだ続くのだが、ちょっと中断して、時節柄、特別編をお届けする。 私はサッカーに限らずスポーツにはまるで興味はないのだが、旅行中にわずかながら国際試合と接触することがある。サッカーのワ―ルドカップの記憶も…
『僕のインド大全』 この企画は細部まで考え、すでに著者に伝えた。この企画に関しては、珍しくいつもの全面否定ではなかった。企画内容は変わるにしろ、蔵前インド本が実現する可能性はありそうだ。蔵前さんが書きたいと思う本と私の企画が、ごく一部は一致…
『読みやすい文章の書き方』 天下のクラマエ師こと、蔵前仁一さんの文章は、けっして「美文」とか「名文」といったたぐいの文章ではないが、読みやすく、わかりやすい整った文章だ。想像するに、手塚治虫のマンガの電球のように、ピカッと文章のアイデアがひ…
韓国の旅番組を見た。初めはあまりおもしろくないと思っていたが、しだいに興味深くなってきた。韓国人の旅のスタイルが見えてきたからだ。 その旅番組は、「花よりおじいさん」という。4人のベテラン芸能人の外国旅行を、年下の芸能人がサポートするという…
観光史や旅行ガイドブックの歴史などを調べていて、偶然出会った論文、「明治初期京都の博覧会と観光」(工藤泰子、京都光華女子大学紀要2008年12月)を読んでいて、このアジア雑語林用の原稿案が浮かんだ。 幕末の京都は戦で荒廃し、明治になると都の地位も…
確認したいことがあって、ウチにあるはずの本を探し始めたのだが、なかなか見つからず、奥行き30センチの本棚に前後2段に押し込んでいる本の、奥にある本を取り出していたら、「もしかして、これかな?」という本が出てきた。探していた本は今もまだ見つか…
あんなことも、こんなことも ここでは、旅行業界のさまざまなエピソードをメモ風に書いていく。 ■シーズナリティ 1970年のこと、安いツアーを作ることを考えていた山田は、BA(ブリティッシュ・エアウエイズ)の木曜便の100席分を1年間まとめて買うという…
道祖神 『旅は人に生きる喜びを与えるものです』と言う本の副題は、「塾長・山田學の物語」となっているのだが、いままで「塾」の説明をしてこなかった。中小の旅行会社の経営者たちは、長年旅行業界に身を置いて大活躍してきた山田を講師に迎えて勉強会を作…
東京オリンピック開催中は外国で 1964年4月、海外旅行が自由化された。それまでは、日本政府の許可がなければ海外渡航ができなかったのだが、自由化されたことで、誰でも海外観光旅行ができるようになった。「ひとり、年に1回、持ち出せる外貨は500ドル」と…
海外観光旅行前夜 図書館にとって旅のガイドブックは実用品であり消耗品だから、シリーズものは新版が発売されたら、いままで所蔵していた本は廃棄処分になる。シリーズものではなくても、ある程度月日が流れると、廃棄処分になる。あるいは、旅行ガイドブッ…
のちに『アフリカの満月』となる原稿を書いていたころだから、1999年の暮れごろだろう。半分ほど書きあげた原稿を旅行人編集部に送ると(あのころだから、「送る」というのは原稿の束を段ボール箱に入れて宅急便で送るという意味だったが、この本からワープ…