2013-01-01から1年間の記事一覧

537話  だいぶ前とちょっと前の海外旅行の話  その1

*旅から帰ってきたが、旅の話は長くなりそうなので、すぐにはアップできない。「行った、見た」というだけの文章ならすぐ書けるが、調べものをしてから書くとなると、ちょっと時間がかかる。旅の話を書いている時間は、すでに書き溜めておいた文章を発表す…

536話 本の探し方、買い方

いつもは読んだ本の話をしているのだが、今回は本を手に入れるまでの話をしてみよう。 最近は書店で本を探すことがめっきり減った。近所の本屋にもそれほど多くは行かない。気になる雑誌の点検と文庫や新書の新刊を書くくらいだ。神田巡りをやるのは数カ月に…

535話 日本のインド料理店

日本のタイ料理店を調べたら、ほかの料理店事情も知りたくなった。日本の外国料理店でもっとも多いのは中国料理だということで、ほぼ間違いないと思う。次はイタリア料理か韓国・朝鮮料理かは、わからない。概数を知る手だてはあるのだが、調べてもあまり面…

534話 日本のタイ料理店 2013

讃岐うどん店の分布を調べていたら、昔やったことがあるタイ料理店調査を思い出した。詳しくは、135話、170話、242話参照。昔調べた日本のタイ料理店総数だけを書き出すと、2006年には492軒、2008年には717軒あった。数字の出典は今回もワイワイタイランド。…

533話 全日本讃岐化計画

私は讃岐うどんが好きで、その讃岐うどんが大阪にも進出しているという話を316話に書いた。それは、ちょっと小耳にはさんだ話とわずかな資料を使って書いたものだが、今回はもうちょっと調べて書くことにした。昨今、うどんのチェーン店がはやっているの…

532話 ハノイ 百態百景

神保町でワゴン遊びをしていたら、店頭のワゴンに大きな写真集がのっているのが目についた。ワゴン遊びというのは私の造語だ。神保町散歩は中学生時代からやっているから、私が買いたくなる本を置いているのはどの店か、もうとっくにわかっている。だから、…

531話 研究者と雑談

大学の医学部の教授たちと雑談する機会があり、おもしろい話を聞いた。アメリカと日本の薬の違いというのが、その時の話題だった。アメリカの薬は効力が強いというのだ。日本の薬は、それほど強くない。これは、製薬技術といった問題ではなく、「犠牲」に対…

530話 輸入品の年表を読む

どこの図書館でも、ときどき「ご自由にお持ちください」という表示とともに、廃棄処分にした書籍や雑誌が出入り口付近に置いてあることがある。よく見ると、本の山のなかにもう20年以上探していた貴重な本があり、感動してもらって帰ったこともある。図書…

529話 長崎のシャム通事

江戸時代の外国語学習事情が知りたくて、『<通訳>たちの幕末維新』(木村直樹、吉川弘文館)を読んだ。「へー、そうだったのか」とわかったのは、江戸時代の通訳は医者と同じで、一子相伝の家業だから、親が子を教育する。武士と同格には扱われないという…

528話 『あの日、僕は旅に出た』をめぐるいくつかの話 後編

若い頃の旅は日々新鮮で、ただ歩いているだけでさまざまな物語が目の前に現れて、それがいつまでも色あせずに輝いている。だから、旅の話を書くネタに苦労はしないのだが、その後の旅はどうも印象が薄い。ほんやりとそんなことを考えていたら、沢木耕太郎も…

527話 『あの日、僕は旅に出た』をめぐるいくつかの話 中編

いままで、手を替え品を替え、『蔵翁自伝』の企画を考えてきた。なぜ勝手にそんな企画を考えるのかと問われれば、「私が読みたいからです」と言うしかない。次の本もその延長で紹介したことがある。 若い夫婦が、イギリスからオーストラリアまで旅をして、出…

526話 『あの日、僕は旅に出た』をめぐるいくつかの話 前編 

蔵前仁一著『あの日、ぼくは旅に出た』によれば、彼の初の著作『ゴーゴー・インド』に対して、不遜にもこの前川が「酷評したハガキを送り付けてきた」そうだ。「昔のことは覚えていない」などと、カサブランカの酒場のおやじリック・ブレインのセリフが口グ…

525話 アジア人旅行者

前回の出身地の話を書いていて思い出したのは、最近、旅から帰った友人たちが、同じ話をしていたことだ。 アジアを旅していて、観光地で、こう声をかけられることが多いというのだ。 「ハロー! アンニョン・ハシムニカ?」 あるいは 「ハロー! アー・ユー…

524話 Where are you from?

テレビ東京の人気番組「youは何しに日本へ?」は、日本の空港にいる外国人に、日本に来た理由をたずねるという構成で、場合によってはそのあと同行取材する。取材者がアップアップしながらギリギリの時間と能力と予算で作っているのが、良くも悪くもテレ東ら…

523話 地域からも自由になって

前回までの地域研究に関する文章を書いていて、ある人物の顔が浮かんだ。地域研究とは対極にありながら、しかし「広く、かつ深く」と考えている点ではあまり変わらないという研究者がいる。傑出した偉人であり、尊敬していて、私が書くものに大いに影響を与…

522話 地域研究と東南アジア  その2

前回、地域研究とは、スーパーマンの研究者を養成する全体理解の学問だという話を書いた。京都大学における地域研究の歴史の話を読んでいて頭に浮かんだ事がふたつあり、ひとつ目は前回書いた。今回は、思いついたふたつ目のことを書く。 私がタイでやってき…

521話 地域研究と東南アジア その1

地域研究とは、文字通りある地域の研究という意味だと、つい先日まで思っていた。それ以上の意味があるとは思ってもいなかった。ビルマの小説家マウン・ターヤさんと雑談をしていた時に、彼はしばしば“area studies”という語を使ってビルマ研究の話をしたが…

520話 フィリピンの本の話から

前回の話の続きを書きたくなった。農文協が出している「世界の食文化」シリーズ全20巻には『極北』まであるが、『フィリピン』はない。まあ、太平洋の島々も、ギリシャも東ヨーロッパもポルトガルの巻も、インド以外のインド亜大陸の国々やトルコ以外の中…

519話 あの特別な日の夜

久しぶりに、上智大学の寺田勇文さん(文化人類学、フィリピン研究)に会った。だいぶ前にたった一度会い、ほんの数語ことばを交わしただけなのだが、あのときのことはよく覚えている。寺田さんも、「ええ、前に会ったのはあのときですね」と、あの日のこと…

518話 混ぜご飯と混ぜる飯の話 その2

前回の話で、黒田勝弘氏が、ビビンパが西洋人に受け入れられるには食べ方を工夫しないといけないと書いた。西洋人はご飯をこねくり回して食べないし、スプーンで飯は食べないからだ。西洋人の食べ方に関しては、そのとおりだ。イギリスではカレーライスもナ…

517話 混ぜご飯とご飯を混ぜる話 その1

韓国は、政府が主導で、韓国料理を世界に売り出そうとしている。ドラマ「食客」もそれがテーマで、「日本料理が世界で人気なのに、なぜ韓国料理が世界で評価されないのだ」というセリフも出てくる。韓国のドラマとポップミュージックでは日本を抜いて世界で…

516話 タマキングから、あの小松義夫さんと「建築家なしの建築」

蔵前仁一さんの最新刊『あの日、僕は旅に出た』(幻冬舎)の出版記念パーティーで、タマキングこと宮田珠己さんに会い、世の中の変な物探しの話をした。世の中だけでなく、出版界もわからないなあと思ったのは、変な物本を書いている宮田さんの本の中では、…

515話 鈴木明が書いた台湾

日本人が書いた台湾の本と言えば、鈴木明を語らないわけにはいかない。 鈴木明と言えば、一般的には『「南京大虐殺」のまぼろし』の作家として知られているのだろうが、私にとっては台湾を教えてくれた人である。台湾について何も知らなかった私に、基礎知識…

514話 台湾の本

久しぶりに台湾に行こう考えている。いままでだって、行きたいとは思っていたのだが、諸事情により行く機会を逸していた。80年代初めに行ったのが最後だから、もう30年も行っていないことになる。その間、台湾経由でタイに行ったことがあるが、途中降機がで…

513話 無視しているわけにはいかなくなった

「英語にはゼノフォービア(xenophobia)という言葉があって、外国人恐怖(嫌悪・排斥)症などと訳されますが、私はこの感情が日本人には見事に欠けていると思います」という文章があって、こんな本は無視すればいいやと思っていたのだが、アマゾンの読者評…

512話 塩なしの食事のことなど

A地点からB地点にただ移動するだけの横断旅行や縦断旅行には興味がない。それがどれほど過酷な旅であろうと、目的地に向かって移動するだけの旅には興味がない。 いつも思っていることを話しているうちに、「ちょっと、まずいかな」と思った。今、目の前に…

511話 さらに、またまた棟方本、もう1冊 

前回紹介したスーパーマーケットの本がなかなかおもしろいので、この著者はスーパーマーケット以外にどんな本を書いているのか気になってアマゾンで調べたら、あれまあ、こんな本が最近出ていたんですねえ。知らなかった。ここのところ建築関連の本はまった…

510話 またしても、棟方本

本屋の棚で気になる本を見つけ、ページをパラパラとめくったら、「いかにも、前川好みの本だ」といわれそうな内容で、即購入決定! 帰りの電車で、バッグから本を取り出してよく見たら、著者に心当たりがあった。この著者の『スーパーマーケットマニア』(講…

509話 即席麺と街の麺料理

前回、『即席麺エサイクロペディア2 世界の袋麺編』(山本利夫)の話が途中で終わったので、続きを書いてみよう。私は即席麺はあまり好きではなく、カップ麺はまったく食べない。袋麺は以前に雑語林でも書いたようにマルタイ製品と日清焼そばの袋麺以外はほ…

508話 傑作2冊 『おみやげと鉄道』、『即席サイクロペディア2 世界の袋麺編』

「これはよくできているなあ」とか「おもしろいなあ」などと思いながら本を読んだのは、2010年に出た『ナマコを歩く』(赤嶺淳)以来だろうか。 まずは、『おみやげと鉄道』(鈴木勇一郎、講談社)だ。著者は1972年生まれの日本近代史が専門の歴史学者。内容…