2012-01-01から1年間の記事一覧

407話 東京オリンピック聖火リレー

ついさっき、いつものように自宅で本の捜索をしていたら、アジアの旅行事情の資料として買っておいた本を見つけた。東京オリンピックに関連する本なので、前回の話のおまけとして紹介してみよう。 その本というのは、『聖火の道ユーラシア』(麻生武治・森西…

406話 映画「東京オリンピック」

前回、東京オリンピックの話を書いていたら、市川崑監督の映画「東京オリンピック」(1965)の話をしたくなった。東京オリンピックが開催されたのは1964年で、その記録映画が公開されたのは翌65年である。この映画は、中学校教師に引率されて、街の映画館に連…

405話 世代間格差

あれは私が高校生の頃だったから、1960年代末だと思う。何かのきっかけで、母から戦後の食糧難の話を聞いた。映画やテレビで、「食糧難」の時代があったことは知っていたし、「買い出し列車」だの「闇市」だの「タケノコ生活」といった戦後用語も知っていた…

404話 文章力がないものだから

よほど変わった経歴の人物でもなければ、それまでの生涯で、文章を書いた経験よりも読んだ経験の方が多いはずだ。だから、普通の判断力があれば、世間の出版物の文章と、自分が書いた文章のレベルを比較して判断できる。 私は子供時代から人並み以上に文章を…

403話 写真は嫌いだが・・・ 後編

写真もカメラも嫌いなのだが、ネットでコンパクトカメラの広告を見て、最新式のカメラって、どういうものだろうかと、ふと思った。心の隙間の好奇心である。買いたいとか欲しいというのではなく、知りたいという気持ちだけなのだ。最新式デジタルカメラ事情…

402話 写真は嫌いだが・・・  前編

カメラがデジタル時代に入ってから、1台もカメラを買ったことがない。かなり前に1台もらったから、持ってはいるのだが、ほとんど使っていない。使わないうちに、時代遅れのカメラになってしまった。 もともと、写真が嫌いだ。撮影するのも、されるのも、好…

401話 パスポートのお値段

パスポートの有効残存期間が半年を割ったので、更新することにしたのだが、またしてもやられた。10年前に申請した時は、「写真がだめだ」といちゃもんがついた。写真の上辺から頭頂までの空白部分は、規定では4ミリ±2ミリということになっている。つまり、2…

400話 唇寒し

2月初め頃からずっと、体調がどうもおかしい。現在までさまざまな検査を受けているのだが、いずれの検査でも「異常なし」という結果で、それはそれで喜ばしいのだが、だからといって体調が元通りになるわけでもないので、困ったものだ。 40歳を過ぎたころに…

399話 取材旅行の功罪

NHKのハイビジョン特集「人生のロングトレイル ―アメリカ3500キロメートルの道のり」が、今年3月に再放送されたらしい。最初に放送されたのは2007年9月で、このときの記憶がいまも強く残っている。アメリカの東を南北に走るアパラチア山脈を巡礼のごとく…

398話 むかし話をする人が

前回に引き続いて、韓国文化の本に「参考文献」として登場したもう1冊の本から、話を始める。 ある本を読んでいたら、参考文献として使っている『朝鮮の食と文化 ―日本・中国との比較から見えてくるもの―』(佐々木道雄、1996)という本からの引用があり、…

397話 韓国のタバコの吸い方

韓国文化の本を読んでいたら、参考文献として使っている本がおもしろうそうなので、ネット古書店に注文することにした。『韓国の風俗 ―いまは昔―』(趙豊衍著、統一日報・尹大辰訳、南雲堂、1995)という本だ。1914年にソウルで生まれた著者が書いたエッセイ…

396話 アメリカ人が好きな食べ物

インターネットで調べ物をしていたら、ちょっとおもしろい記事を見つけた。アメリカのCNNが発表した「世界のうまい食べ物ベスト50」(CNN World’s 50 Most Delicious Foods)という記事だ。 http://www.cnngo.com/explorations/eat/worlds-50-most-deli…

395話 母の背

子供の頃は、扁桃腺肥大という持病があって、年に数回高熱を出して寝込んだ。母はいくつもの病院に行ったあと、「いずれ大人になったら熱を出さなくなるでしょうから、手術はやめましょう」という診断を大学病院で得て、そのとおり20代後半には、めったに…

394話 誰にも明日は見えない 5/5

入院中の食事に、取り立てて不満はなかった。もちろん、うまい飯ではなかった。病院でなくても、社員食堂や独身寮の料理のような大量生産の料理もその食器も大嫌いだが、長年の旅行体験のおかげで、選択の余地がない場での適応力はあるので、「しかたがない…

393話 誰にも明日は見えない  4/5

心筋梗塞とはどういう病気なのか、素人の私が説明して間違えるといけないので、ここで解説はしない。ただ、ごく簡単に言えば、心臓の上から出ている冠動脈という血管が細くなり、詰まれば血が流れなくなり、死に至る病だ。胸に死ぬほどの痛みを感じて、すぐ…

392話 誰にも明日は見えない  3/5

大きな病院に着き、受付で要件を話し、クリニックから託されたレントゲン写真などを渡した。 「救急処置室の前でお待ちください」 受付でそう言われたが、10分待っても、20分待っても、私の診療はなかなか始まらない。どうなっているのか気になっていると、…

391話 誰にも明日は見えない 2/5

2005年の初夏の木曜日。仕事を終えて駅まで歩いていたら、体が重いと感じた。だるいといってもいい。風邪をひいて熱があると、体が重くてだるいということはあるが、そういう感じとはちょっとちがう。体がほてるという感じではない。10キロの荷物を背負って…

390話 誰にも明日は見えない  1/5

ここのところ体調があまり良くないので、かかりつけの病院で検査を受けることにした。きょうはトレッドミル検査というものをやった。ルームランナーに乗って、速足から小走りくらいの速度で走り、心臓に負荷をかけて、心電図や血圧を調べるという検査だ。 体…

389話 「月曜日にひなたぼっこ」

テレビの旅番組でスペインを特集していた。いつものアンダルシア物ではない。どの地域かはわからないが、さほど大きくない連絡船が画面に登場している映像を見て、ちょっと前に見たスペイン映画を思い出した。 2002年の秋は、しばらくマドリッドで過ごした。…

388話 それはそれは寒かった日と冷たかった日

録画していた番組を見ていたら、おまけに「世界の天気」というミニ番組がついていて、おもしろそうなので世界各地の天気を見ていた。ソウルに「−7℃」という数字が見えて、「さすがソウル、寒くてたまらないなあ」と思ったが、ちょっと気になることがあって…

387話 ミルクの行商

西洋人は古くから牛乳を飲んでいたのだろうと思いがちだが、牛乳はチーズなどの乳製品の原料であったり、煮込み料理に入れるといった使い方をしていて、長らく飲み物ではなかった。フランスでは酪農家を別にして都市住民は、18世紀後半からカフェ・オレとし…

386話 東京のインドネシア料理店のことから、鹿児島に

『戦後日本=インドネシア関係史』(倉沢愛子、草思社、2011)は、資料集という意味あいが強く、物語性の弱い記述が続くから、インドネシアに興味のない人にはちょっとつらい本かもしれない。5000円近い定価の本だから、専門家を相手にした内容だが、私のよ…

385話 つまらない論文

ある会議で、大学院生に会った。博士論文を執筆中だというが、話を聞くとまるでおもしろそうじゃない。論文の内容云々よりも、彼の関心分野も行動範囲も非常に狭く、ちょっとでも専門から外れることとなると、まるで無知だということに落胆した。どうせ、つ…

384話 ジンギスカン料理の、あの鍋

『焼肉の誕生』(佐々木道雄、雄山閣、2011)は、いわゆる「焼肉」のほかにも、私がかねてから疑問に思っていた焼き鳥の歴史やジンギスカン料理誕生のいきさつなどについても詳しく書いてある。調査をやるなら、これくらいは資料を読みなさいという刺激を与…

383話 あと20人の泉ピン子を

NHKのドラマ「開拓者たち」を見た。貧農の娘が写真見合いで満州開拓者のもとに嫁ぎ、戦後は栃木で再び開拓者になるというドラマで、出来は可もなく不可もなくというところだが、主演の満島ひかりが問題だった。彼女に責任があるのではなく、貧農の娘に満…

382話 イスラエルのことから

四方田犬彦の雑文集『心は転がる石のように』(ランダムハウス講談社、2004)のなかで、読み応えのあるのは、やはり第3章のイスラエル滞在記だろう。著者が2004年にイスラエルにしばらく滞在し、研究生活を送るという話を聞いた友人たちの反応は、70年代に…

381話 黎明期の日本の外国料理店

前回触れた『古川ロッパ昭和日記』(晶文社)の1954(昭和29)年4月22日分に、こういう文章がある。 「印度料理のナイル(山本嘉次郎より教はった店)へ入り、インディアン・カレーを試みる。カレーは、やはりCBのやうな、辛くてドロッとしているのがいゝ…

380話 1934(昭和9)年の日本の西洋料理

このふた月ほど、スパゲティー関連の資料を集中して読んでいる。スパゲティーというありふれた食べ物なのに、じつは資料といえる本はほとんどない。作り方の本やムックならいくらでもあるが、その歴史を書いた本はない。パスタの本ならあるが、その本でもス…

379話 1月4日の海外旅行広告から

自宅に配達された1月4日の朝日新聞には、4ページにわたってH.I.S.の全ぺージ広告が出ている。多分、朝日だけではなく他紙にも載っていることだろう。普段はツアー広告などまったく目を止めないのだが、きょうの「目的別に選べる旅」とタイトルされた1ペ…

378話 ベトナムコーヒーとエスプレッソ 

ベトナムに行った多くの人は、カフェ文化に強い印象を受けるようだ。旅行記にもガイドブックにも、エッセイにも、ベトナムのコーヒーが登場する。旅行者がカフェのコーヒーに注目したのは、あの金属製のフィルターのせいだ。コーヒーカップの直径よりちょっ…