2020-01-01から1年間の記事一覧

1464話『食べ歩くインド』読書ノート 第12回

コメの話・・当然ながら、随所にコメの話が出てくる。ひとまとめにして、「インドコメ図鑑」という6ページコラムにして、さまざまなコメの写真をつけてくれればわかりやすかったと思う。コメの名前だけ出てきても、それがどういうコメなのかまったくわから…

1463話『食べ歩くインド』読書ノート 第11回

P255赤蟻・・テレビの仕事でタイに行った。タイ人の取材コーディネーターが案内したのはガーデンレストランだった。取材ではなく、その日の夕食なのだが、運ばれてきた料理を見て、昆虫料理専門店だとわかった。「また、これかよ。タイに来るたびに、こうい…

1462話『食べ歩くインド』読書ノート 第10回

P159バフ・・1974年カトマンズ。レストランのメニューを見て、”Buff Steak”という文字が見え、「“Beef”の綴りを間違えたのだろうが、とりあえず注文してみるか」。その肉はえらく硬く、硬いクジラ肉のような印象だった。それは、私が生涯で初めて口にした牛…

1461話『食べ歩くインド』読書ノート 第9回

P131血の食文化・・ヤギの血に内臓を加えた料理に、「チベットやネパールの食文化との近似性を感じさせる」という文章から、「インド料理と血」について考えた。 まず、世界の料理と血の例を。 肉食をする民族は、血に関してふたつのグループに分けられる。…

1460話『食べ歩くインド』読書ノート 第8回

P105コメの飯と粉もの・・ターリー(金属製大皿)に盛られたインド料理を見ていて、ずっと気になっていたことがある。コメの飯に粉製品もついていることが多いようなのだ。粉製品というのは小麦粉をはじめいろいろな穀物の粉を加工したもので、薄焼きせんべ…

1459話『食べ歩くインド』読書ノート 第7回

P43ローカライズ・・「欧米風ファストフードもインド人の口に合うようにローカライズされ、愛食されている」。 外国の食べ物を自分のものにするというなら、日本にはラーメンやカレーやトンカツなどその例はいくらでもある。いつもなら特に気にならない記述…

1458話『食べ歩くインド』読書ノート 第6回

外食産業史の3回目だ。 『食から描くインド』(井坂理穂・山根聡、春風社、2019)は、さまざまなトピックを集めた興味深い本だが、この読書ノートの資料になるかどうかという点では、傍線を引き付箋をつけるページはなかった。イギリスにおけるインド料理の…

1457話『食べ歩くインド』読書ノート 第5回

外食産業史の続きだ。 タイの外食産業史はこういうものだろうと想像している。 19世紀末にしばらくタイに滞在したイギリス人は、「バンコクの路上で働いているのは中国人などで、タイ人の姿は見えない」と書いている(”The kingdom of the Yellow Robe” by E…

1456話『食べ歩くインド』読書ノート 第4回

この読書ノートは、取り上げるテーマが多岐にわたり、長短いろいろあるので、いままでのこのコラムのように、1回1話で構成することはできない。したがって、箇条書き風の構成になり、話の途中で「次回に続く」ということになるだろうが、まあ、その時はその…

1455話『食べ歩くインド』読書ノート 第3回

前々回、食べ歩きガイドはいままでほとんど買ったことがないと書いたが、正確に言うと、あれは誤りだった。日本の食文化史を知るために、かなり昔に出版された料理店ガイドを買い集めたことはある。だから実用目的ではないが、資料として料理店ガイドは買っ…

1454話『食べ歩くインド』読書ノート 第2回

『食べ歩くインド』が出るまでに私が読んだインド食文化関連書のいくつかを書き出してみよう。 国会図書館の蔵書リストで、書名に「インド料理」という語が入っているもっとも古い本は、タイムライフブックスの「世界の料理」シリーズの1冊、『インド料理』…

1453話『食べ歩くインド』読書ノート 第1回

『食べ歩くインド 北東編』『同 南西編』(小林真樹、旅行人)を読みながら、傍線を引き、付箋をつけた部分に関して、発見や疑問や調査や思い出などさまざまな事柄を、これから書いていこうと思う。 最初に私の立場を明らかにしておくと、インドやインド料理…

 1452話 その辺に積んである本を手に取って その9(最終回)

建築と街歩きの本 1445話で書いたように、建築や街歩きの本を調べていて、『昭和の東京』を見つけてネット書店に注文した。すぐあとで、『くらべる世界』を注文したのだが、引き続きアマゾン遊びで建築や街歩きの本を探していて、『一度は行きたい幻想建築』…

1451話 その辺に積んである本を手に取って その8

ロマンチック街道 深夜のNHKBSでヨーロッパを空撮した番組が何度も放送されていて、その1本を見て、「まあ、なんということでしょう」と、リフォーム番組のナレーションのような状態になった。雪のロマンチック街道の空撮映像を見て、「いいなあ、行きたいな…

1450話 その辺に積んである本を手に取って その7

味噌、納豆、醤油 小林真樹さんが旅行人の新刊『食べ歩くインド』を送ってくれたのだが、すぐには読めなかった。ちょうど『謎のアジア納豆』(高野秀行、新潮社、2016)を読み始めたところだったからだ。この本も、買ってから時間がたち、そろそろ古漬けにな…

1449話 その辺に積んである本を手に取って その6

ブラジル音楽 ひと月くらい前から、何度目かのブラジル音楽ブームが来ている。1960年代のボサノバブームから、ラジオでボサノバは聞いていたが、どうもしっくりこなかった。金持ちの家のお坊ちゃんとお嬢ちゃんが作り出したとわかる音楽で、その「いかにも、…

1448話 その辺に積んである本を手に取って その5

渋沢栄一と異文化 明治の人で、いつかその生涯をざっとでもおさらいしたいと思っている人物がふたりいる。後藤新平と渋沢栄一だ。日本近代史の政治や経済に対する関心からではなく、異文化とどう対応したのかを知りたくなったのだ。 どちらの人物についても…

1447話 その辺に積んである本を手に取って その4

憂鬱なタイ 例によって、ネットでおもしろそうな本を探していたら、『王室と不敬罪』(岩佐淳士、文春新書、2018)を見つけた。そういう本が出ていることを知らなかった。5年ほど前から、新刊書を追うことにほとんど興味を失っているから、新刊書を絶えずチ…

1446話 その辺に積んである本を手に取って その3

台湾 前回『くらべる世界』を注文したと書いたが、すぐさま、届いた。期待通り、おもしろい。フランスのじゃんけんは指で木の葉の形をつくる「井戸」もある4種類の戦い。インドネシアのじゃんけんは、親指(ゾウ)、人差し指(人)、小指(アリ)の3指対決だ…

1445話 その辺に積んである本を手に取って その2

街歩き 建築史家兼建築家の藤森照信の本は折を見て買っているが、先日、「まだ買っていない本があったかなあ」と思いつつアマゾンで調べたら、チェックしていなかった本が見つかった。『昭和の東京』(路上観察学会、ビジネス社、2009)は、その世界ではご存…

1444話 その辺に積んである本を手に取って その1

韓国ドラマ すでに読んだ本とこれから読む本が部屋のあちこちに積んである。読んだ本が探せないことが多くなったので、何とか整理しなければと思っているものの、まだ何ともしていない。この機会に、その辺に積んである本のなかから見つくろって、あれこれ書…

1443話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号 

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その10(最終回) ここ数年のアジア雑語林を読んだ何人かが、「あの前川が、ヨーロッパの旅行記をねえ・・・」と言った。「アジアの路上で、安飯を貪り食っているのがお似合いのお前が、ヨーロッパかよ」…

1442話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その9 「売れる本の書き方を、教えてよ」と天下のクラマエ師に言うと、「フン」と鼻でせせら笑い、「そんな本を書く気もないくせに」。 書く気がないわけではない。売れる本の書き方がわからないし、たぶ…

1441話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号 

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その8 ブログであれ雑誌連載であれ、何度も同じ話を書かなければいけないことがある。例えば、連載第4回で「プラハの春」の説明をていねいにやっておけば、あとは説明なしでいつでも「プラハの春の時・・…

1440話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号 

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その7 2019年12月25日に、産業編集センターの佐々木さんから、「アジア雑語林のプラハ旅行の話を本にしたいのですが、いかがでしょうか」というメールをもらい、翌2020年1月10日の午後、神田神保町のタン…

1439話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号 

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その6 取材ノートを書いていると、旅のあれこれが整理されて、どのテーマを文章にするかが次第にわかってくる。ノートに書いたことに肉付けすればいいから、帰国後、この取材ノートを読み返すことはあまり…

1438話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その5 本の話と雑談が、アジア雑語林の基本だったのだが、2013年の旅行記「台湾・餃の国紀行」以後、旅行記を中心としたブログになっている。そうしようと意図したのではない。母が死んで介護の必要がなく…

1437話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号 

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その4 前回、『アジア文庫から』の話を書いた。まだ在庫があるかどうかめこんに問い合わせていて、思い出したことがある。めこんの最新刊は『動きだした時計 ベトナム残留日本兵とその家族』(小松みゆき…

1436話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その3 アジア文庫のホームページが中断したままになっていることは、あまり気にならなかった。私はデジタルに冷たいのだ。それよりも、アジア文庫の葬式本を出したいと思っていた。タイには、ある人がなく…

1435話 『プラハ巡覧記 風がハープを奏でるように』出版記念号 

なんだか、遠い昔のようなことと、ちょっと前のこと その2 2009年12月、その年最後の本の買い出しに神保町に出かけて何冊か買ったあと、いつものようにアジア文庫に立ち寄った。「アジア雑語林」は毎週きちんと更新されていたので、大野さんはなんとか仕事が…